プランターで手軽に行える家庭菜園が人気です。
最近ではプランターがデザイン面でも機能面でも進化し、様々な専用飼料の登場と品種改良が進んだことで多くの野菜がプランターで手軽に栽培することができます。しかし、どれだけ進化が進んでも避けては通れないのが病気と害虫です。そして地植えとは違って水やりにも気をつかう必要があるのがプランター栽培の大きなデメリットです。
こうした管理の手間や病害虫の予防に役立つのが、農業の定番手法であるマルチングの一種「不織布マルチング」です。
病害虫を予防し野菜の成長を促す「マルチング」とは?
「マルチング」とは、野菜が植えられた地面をビニールや不織布、藁(わら)などの資材を使って覆い隠すことです。以下の写真ではたっぷりの藁を使って土の表面を覆い隠しています。
また、こちらでは黒いビニール系の資材を使用して株本を覆っています。
このようなマルチングを行うのには以下のような理由があります。
- 降雨時の土の跳ね返りによる病気の感染を防ぐ
- 地温を上昇させ、植物の成長を促す(特に濃色系の資材を使った場合)
- 太陽光を反射させ、一部の害虫を寄せ付けない(特に淡色系の資材を使った場合)
- 地表面からの水の蒸散を防ぎ、水やりの頻度が下がる
- 水やりの頻度が下がり肥料の持ちが良くなる
- 雑草を抑制する
最後の雑草を抑制する効果は、養分を効率よく植物に伝えて美観を守るだけではなく、病害虫の増殖を抑える効果も期待できます。
一方で地表からの水の蒸散が減る分、特にプランター栽培でマルチングを行うと水のやり過ぎによる根腐れのおそれがあります。マルチングをした場合には水やりの頻度を半分から三分の一程度に減らし、慣れないうちは時折マルチングをめくって土の乾燥状態を確認すると良いでしょう。
プランターでマルチングが難しい理由
このようにマルチングには非常に高い機能性がある反面で、プランター栽培ではなかなか活用できない理由があります。
マルチングに使用する資材(以下、マルチ資材と呼びます)は主にビニール製で水を通しません。黒やシルバー、透明のビニールが安価に販売されています。しかし、幅は約1m、長さは50mほどあるなどプランター栽培には少し量が多すぎます。こんなビニールのロールをホームセンターや園芸屋さんで見かけたことがないでしょうか?これが代表的なマルチ資材です。
量が多すぎることはおいておいても、ビニールのマルチングをプランターにしてしまうと水やりができません。畑や土の量が豊富で地面ともつながっているレイズドベッドを除けば、このようなビニールのマルチをすると土が干上がってしまいます。また、水やりをするたびにビニールを剥がして、また貼りなおすとなると大変な手間です。
またプランターの形状によっては表面を完全に覆うことで土中の通気性に問題が出る可能性もあります。こうした問題点を解消できるのが水や空気を通す「不織布」を利用したマルチングです。不織布と一言にいっても様々な種類がありますが、マルチングに適しているのは透水性に優れた「防草シート」として販売されている不織布です。
※これ以外にも藁や堆肥、やしがらのマットなどの有機質を使ったマルチングも存在しますが、機能性でやや劣り管理も難しくなるため省略します。
不織布マルチングに適した防草シート
不織布マルチングに適した防草シートは、適度な厚みと高い密度、そして透水性が求められます。
防草シートには高価なものから安価なものまでありますが、安価なものでは透水性が低く、水やりをしてもシートの上に水が溜まり続けてしまいます。一方で高価なものでは厚手で生地が硬く、野菜の成長に合わせて切り込みなどを調整する必要があります。
いくつかの防草シートを使用してきた経験から、マルチングに適していると感じたのはこちらの商品です。
ほかにも適した商品は多数ありますので、お好みで試してみても良いかもしれません。
プランターの不織布マルチング手順
今回はこちらの茎ブロッコリーを植えた角型の野菜プランターに不織布マルチングを施してみたいと思います。
まずは不織布(防草シート)をプランターの大きさにカットします。この時に小さく切りすぎず、むしろ気持ち大き目にざっくりとカットします。厚手で硬くてコシのある不織布はハサミでもカットしやすいです。
次に植えている株の位置にあわせて切り込みを入れます。
今回のようにプランターの中央に1株植えている場合、不織布シートを4つ折りにすると折れ目がガイド代わりになって簡単にカットできます。以下の写真ではカットしたラインを白い線で示しています。
カットした不織布をプランターに敷きこみます。
このように少し大きめにして余分を残しておく方が、隙間ができづらく雑草対策にも美観の面でも優れています。隙間があると、水やりをしたときに土が浮き上がってマルチ資材の上に流れてきてしまい、不織布の上が汚れることがあります。
最後に付属のピンを使って不織布を抑えれば完成です。
このピンは必要であれば追加でホームセンターなどで安価に手に入ります。また、ピンの代わりに重しになるブロックやおしゃれなじゃりを置いてもかまいません。ただし、ブロックや砂利を使うと隙間に不快害虫が住み着くこともあるので、こだわりがなければピンを使うことをおすすめします。
不織布(防草シート)の透水性について
防草シートとして販売されている不織布の透水性について注意が必要な点があります。新品のタオルが思いのほか水を吸わないように、不織布も最初は水を吸いません。タオルの場合には一度洗濯することでふんわりとして水もよく吸うようになりますが、不織布は洗濯機で洗うわけにもいきません。
バケツに水を貯めて、もみ洗いするようによく水を含ませるというのも一つの手ですが、基本的に日に当たっていると勝手に水を吸うようになります。
新品の状態では、不織布マルチングのうえから水をやっても一向に水を通さず不安になると思います。しかし、これはほったらかしで問題ありません。外に置いていれば勝手に水を吸うようになっています。