DIYにおける無垢材の「反り」対策まとめ

DIY

DIYや趣味の木工では丈夫で扱いやすい「集成材」や「合板」が多く使用されます。一方で「無垢材」は多くの魅力が詰まっている反面で欠点が多く敬遠されることが多いです。

そんな魅力と欠点にあふれた無垢材のうち、今回取り上げるのは無垢材の「反り」です。

2つの「反り」

はじめに、単に木の「反り」と言っても2つの段階に分けることが出来ます。1つ目は木を伐採して製材し乾燥する間に生じる「乾燥時の反り」です。2つ目は乾燥後に周囲の湿度に応じて生じる「乾燥後の反り」です。

それぞれ解説していきます。

乾燥時の反り

木は伐採されて「丸太」になり、製材されてホームセンターなどでも見かける角材や板材と呼ばれる「木材」へと姿を変えます。製材されて間もない木材には多量の水分が含まれておりこの水分量は「含水率」という言葉で表されます。伐採・製材したばかりの木材は100%以上の含水率があります。一方で、ホームセンターや材木屋さんで販売される乾燥済みの木材の含水率は30%以下です。

一度乾燥しきった木材の含水率は10%~20%で推移します。湿度の高い時期は含水率が上がり、湿度の低い時期は下がるという「木の呼吸」を繰り返します。

この100%以上の含水率が20%以下まで低下する間にはどのような変化が起こるでしょうか?

水分が抜けるに従って、果物がドライフルーツになるように木も形を変えていきます。ここで木の「反り」が発生します。100%以上の含水率が20%以下まで下がるわけですから大きな反りが発生します。そのため木材は乾燥時に大きな反りをカンナ掛けをして削り取って平面を出してから販売されます。いわゆる乾燥材のプレーナー済みの木材はこれを指します。

乾燥後の反り

木材は製材後の乾燥が済み、店頭に並んでいる時や家具や建築材として使用された後も呼吸を繰り返します。周囲の空気中の水分を吸いこんだり、吐き出したりするわけです。そのため常に含水率が変動し僅かな形の変化が続いています。これは木が朽ち果てるまで続きます。

この変化は木の「反り」という形であらわれます。

DIYでは乾燥された木材を使用しますから、本記事で紹介する反りの対策もこの「乾燥後の反り」への対策となります。

乾燥前の木材を扱う場合は、十分に乾燥してから使用しなくてはなりません。

「反り」の根本的な対策は存在しない

無垢の家具作りにおいて施される「反り」対策とは反りをなくすことではありません。プロであっても、反りを一切発生させない対策を施しているわけではないのです。どんなに高価な無垢の家具を購入しても、反りは絶対に避けられません。これは無垢材の家具を持つ上で避けては通れません。

この反りを嫌って多くの家具は合板や紙のコアを使用して制作され、表面に薄い無垢材を張り付けて作られます。いわゆる突板です。また多少反ったところで機能上差支えがないようなテーブルなどは無垢材が使用されることが多いです。

無垢材の反り対策のポイントは以下の2点です。

  1. 反りを妨げない
  2. 行き過ぎた反りを抑える

要するにちょっとの反りは許容して、大きな反りは抑えてやろうというわけです。

実は簡単な反り対策

反りを妨げず、行き過ぎた反りは抑える。

難しそうだと感じるかもしれませんが実は超簡単です。難易度は低く素人DIYでも全く問題なく行うことが出来ます。こちらはクスの一枚板を使って私が過去に制作した作業机です。

この机を例にとって解説していきます。

長穴加工

反り止め加工で最もベーシックな対策がこの「長穴加工」です。

ポイントは天板と脚と固定しているこの2つのボルトです。

デザインによって、脚と天板の接合方法は多種多様ですが、これは最もシンプルな固定方法のひとつでしょう。天板には鬼目ナットが埋め込んであります。幅広のワッシャーを使っているため隠れて見えませんが、この脚側のボルト穴はこのように長穴になっています。

ボルトは軽めに締め付けることで天板が反った場合、この長穴の分だけ天板が自由に反ることができるわけです。また、長穴のサイズを超えて大きく反ろうとした場合には反りを抑えてくれます。

長穴加工は、ドリルで2つ穴をあけ雪だるまのような形を作ります。これをノミなどでつなげて長穴を作ることで簡単に長穴が完成します。

反り止め

続けて天板の反り止めとしてよく採用される方法です。

適当な角材を用意し、先ほどと同じように長穴をあけます。

好みのデザインで仕上げます。

これをボルトや木ネジで天板裏に固定します。

木ネジを使う場合にはタッピングネジを選択し、ローゼットワッシャーと組み合わせて使うと良いでしょう。

このような反り止めを2~3本も追加すればOKです。

▼こちらは樟の1枚板で制作したダイニングテーブルの反り止めで、同じ方法です。

理屈としては、先ほど言ったように「反りを妨げず、行き過ぎた反りは抑える。」だけです。

ですから、反り止めの方法は多種多様です。

溝を彫って木組みする方法、木の代わりに金属を使う方法。アイディア次第で様々なデザインの反り止めが可能になります。ちなみにこうした反り止めの木材は市販されており、ホームセンターのDIYコーナーに置かれていることもあります。

また、この反り止めの金属版とも言える商品もあります。(専用品ではありませんが、専用品に近い形状をした一般的な金属部材です)

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天板止金具

ここまで紹介した方法では、「長穴加工」が必要でした。

手順は先述の通りドリルとノミを使えば簡単に実現できますが、もし難しい場合には専用の金具が販売されています。脚や幕板と天板を、このような金具で固定すれば長穴加工をせずとも反り止めを行うことができます。

L字になっているものや、平らなもの、縦穴や横穴といくつかのバリエーションがあります。

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また、脚側に溝を掘って木片を使って天板と固定する方法などアイディア次第でいろいろな反り対策が可能です。とにかく反りを妨げず、行き過ぎた反りは抑えるという点さえ守ればなんでもアリです。

ニス塗装

私は好んでオイルを使っていますが、ニスなどの塗膜を形成する塗料を使用することで、木の呼吸を封じ込めて反りの発生を抑制することができます。無垢材を使うからといって、必ずしもオイル仕上げを選ぶ必要はありません。ウレタンニスなどの塗膜を形成する塗料を使うことで、木の含水率変化を抑え、結果的に反りの発生を抑えることができます。

余談:完全な反り止め

反り止めのなかでも効果が高い反面、難易度が高く手間がかかる「蟻溝吸いつき桟」と呼ばれる手法があります。

詳しくは以下の外部リンクを参考にしてみてください。

この方法は、当記事で説明するような「反りを妨げない」という点に反しています。厳密にいえば反り止めに入れる木材も柔軟性はあるものの木と木を互い違いに硬く固定しているため、木と木がお互いを反らせまいと力を掛け合っている状態であり、反りを殺していると言えます。

もちろんこれもひとつの反り対策ですが、加工難易度はともかく固定方法や素材選定が難しく、オススメはしません。そもそも「蟻溝吸いつき桟」のような反り止めでは天板下のスペースを狭くしてしまううえ、デザインにも限度があります。反りを殺すのであれば、合板のように板を互い違いに貼り合わせたり、反り止めをビス止めやボンドでしっかりと貼り合わせた方が難易度が低く近い効果を得られます。

実はやらなくてもいい反り対策

そもそも、反りや反りによって生じる割れは大して実害がない場合が多いです。趣味のレベルでは反り対策を施さずとも大して問題がないことが多いです。無垢材だけを使用して引き出しなどクリアランスがシビアなものを作ると季節によって開け閉めがしづらいなど問題もありますが、テーブルのように多少の反りが機能に影響を及ぼさないものであれば反り止めをしないという選択も間違いではありません。

「反り」を悪化させる木の使い方

ここまでの説明で、「反り」対策はそれほど難しく考える必要がないことがわかっていただけたと思います。それ以上に重要なのは無垢材の使い方です。完成した家具を良い環境で使用することが重要です。

プロが選び抜いた木材で仕上げた高価な家具であっても、使用者が無垢材を理解していなければ良い状態を保つことはできません。

エアコンや暖房器具の風を直接当てる

「反り」の原因は含水率の変化であることは既に説明しました。

含水率が変化するということは、木に空気中の水分が取り込まれたり、逆に木の水分が空気中に逃げ出すということです。風のある日に洗濯ものがよく乾くように、空調器具の風を直接受け続けるとお肌が乾燥するように、木も直接風を受けると乾燥します。特に暖房の暖かい風を直接受け続けると、通常ではありえないほど含水率が低下します。

しばらくは持ちこたえてくれますが、長く同じ環境に置かれれば「割れ」といった形で症状があらわれてしまいます。

水に付ける

無垢材が水に弱いとはよく言われることです。

しかし、実際にはあまり敏感になる必要はありません。例えば食べこぼしや少々の水がこぼれて、それを放置したところでさしたる影響はありません。それでも日常的に水が滴るような場所で使い続ければ、含水率の変化はもとよりカビや変色などを生じる可能性があります。

ムラのある仕上げやメンテナンス

木はオイルやニスなどの塗装を施して使用されます。

オイルを含め塗料の種類は多種多様です。塗膜を形成するものもあれば木に浸透するものもあります。塗膜を形成するものは木の呼吸を妨げ、含水率の変化を極めて緩やかにします。一方で木に浸透するものは木の呼吸を妨げず、含水率の変化にほぼ影響を与えません。

このように、含水率の変化スピードに差がある複数の塗料を1枚の板に使用した場合、一部は含水率の変化が早く、一部は含水率の変化が遅いという差が生じます。これにより一部だけ反ろうとする力が生じて割れを発生させる原因になります。

1枚の板に複数の塗料を使うケースは少ないですが、塗装にムラがあって一部は塗膜が形成されていて、一部は塗膜が剥げているケースでは部位によって含水率の変動差が大きくなります。

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