DIYや趣味の木工では、丈夫で扱いやすい集成材や合板が使用されることが多いです。
一方で無垢材には多くの魅力が詰まっている反面、欠点も多い素材です。そのため無垢材は一般的に扱いが難しいとされており、趣味の世界では敬遠される傾向にあります。そんな欠点が多い無垢材の数ある欠点のなかで代表的な「割れ」の対策を紹介します。
ネットで「割れ」対策を調べてもプロの技術を紹介する程度の情報が多く、DIY目線での無垢材の割れ対策は情報が豊富とは言えません。
この記事では、私のDIY経験をもとにした無垢材の割れ対策や予防策をまとめています
【無垢材 × DIY】DIYにおける無垢材の使用について
無垢材は扱いが難しく高価であると言われています。
この「扱いの難しさ」と「高価」という2点の誤解について、DIYあるいは趣味の観点から解説したいと思います。
扱いの難しさ
扱いが難しい、その最大の理由は「反り」でしょう。
しかし、実際に無垢材を使ってみると「反り」が無垢材の使用を諦めるほどの問題ではないことをお分かりいただけるはずです。
そもそも「反り」が発生したといって見た目が著しく損なわれたり、家具などが破損したりするような大きな問題は起きないのです。反りとは集成材であっても発生しますし、プロが選び抜いた上等な無垢材であっても発生します。
せいぜいがテーブルの天板の水平が僅かに狂う程度のものです。
また、反りへの根本的な対策は存在せず、一般的に行われる対策も決して難しいものではないのです。
こちらの記事で「反り」についてもっと詳しく解説しています。
無垢材は決して高くない
続いて無垢材の価格です。
「無垢材は高い」と一様に考えられる方が多いのですが、それは違います。
「良い無垢材は高い」というのが正確なところで、「悪い無垢材」は集成材や合板より安いことも珍しくないほどです。
「悪い無垢材」というと言い方が悪いのですが、市場価値が下がるような難点がある無垢材を指します。
しかし、素人目にはわからないものや、難点というより「味がある」と言った方が良いものなど多種多様です。
詳しくは無垢材の選び方や買い方とあわせて以下の記事で解説しています。
割れの対策:割れを埋めて塞ぐ
木屎で埋める
「木屎」とは、おがくずと炊いたお米を混ぜたものです。
おがくずと炊いたお米を混ぜたものを割れに詰め込んで使います。昔から使われてきた方法で、現在でも十分通用する方法です。しかし、現在ではお米の代わりに接着剤を使う方法が主流です。更に言えばより便利な木工用のパテを使うことが増えています。
こちらが私が過去実際に使った木屎です。ブラックチェリーを削った時に出たおがくずを使っています。
小さな葉節の穴を埋めるために使用しました。
埋めた跡はこんな感じ。更に研磨してオイル仕上げなどをするともっと目立たなくなります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
おがくずで埋める
木屎の現代版です。
「おがくずで埋める」と言った場合には、おがくずと接着剤を混ぜたもので割れや穴を埋めることを意味しています。接着剤には専用の銘木用アロンアルファもありますが、これは市販されておらず入手性が悪いです。
そのため、ごく普通の木工用ボンドやシリコンシーラントを使う方もいるようです。私の場合には木工用ボンドを使用しています。このように、木工用ボンドとおがくずを混ぜます。
おがくずは細かなものを使うと綺麗に埋めることができます。
逆にあえて粗いものを使うとそれはそれで見た目のアクセントを作ることができます。分量としてはおがくずとボンドを1:1程度入れて混ぜていき、後は適当に調整します。
これくらいになればOK。
同程度の色の木を使えば目立たなくなりますし、違う色の木を使ってアクセントにすることもできます。こんな風に大雑把に、割れの奥までしっかりと届かせるように押し付けるように刷り込んでいきます。どのみち表面は研磨しなおすことになるので、しっかり充填させることを意識します。また穴や割れの内部もできるだけやすりをかけて脆弱な層があれば取り除いておきます。
乾燥後、仕上げをすると綺麗に割れを塞ぐことができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
おがくずで埋める2
おがくずで埋める方法の2つ目の方法です。
こちらの方が簡単かもしれませんが、仕上がりの強度や、しっかりとおがくずを詰め込むことが出来るという点では先ほどの方法が勝ります。まずは、そのままのおがくずを隙間に詰め込みます。どちらかというと隙間に注ぎ入れるイメージです。
隙間に詰めたおがくずに、液状の接着剤を垂らします。スタンダードなアロンアルファのように液状の瞬間接着剤であればなんでも構いません。
乾燥後にやすりで削って仕上げれば完成です。
蜜蝋で埋める
木材の表面仕上げにも使われる蜜蝋を使って割れや穴を埋める方法もあります。
蜜蝋は、こちらの商品のように粒状のものが使いやすいです。
蜜蝋を金属容器に入れ、火にかざすとすぐに溶けて液状になります。
これを割れに入れて塞ぎます。また、蜜蝋は溶かしてもすぐに固まり始めます。完全に固まりきる前の蜜蝋は適度に柔らかいため、へらなどで割れに押し込むようにして使うと綺麗に割れを埋めることができます。
最後に余分な蜜蝋をこそぎとれば完成です。
強度や作業性、見た目では(個人的に)おがくずの方が良いように感じます。また、おがくずを使う方法と比べて蜜蝋を消費するため割高です。
蜜蝋大好き!という方やこだわりがある方には良いと思います。
割れの予防策:割れの進行を止める
割れの先端に穴をあける
これは仕上げと言うより保管時の割れの進行を防ぐ目的で行われます。
▼割れが木口側(右)から左に向けて進行しています。
この割れの先っぽに穴をあけます。
これにより、割れようとする力が逃げるお陰でこれ以上割れが進行しづらくなります。
保管時にこれ以上割れを進行させたくない!という場合に採用すると良いでしょう。
穴は小さなもので構いません。10mm程度のドリルで穴をあけておくだけでも効果が見込めます。
もちろん穴が開いたまま仕上げるわけにもいきませんから、仕上げる場合には以下の対策に進みます。
割れの先端に穴をあけて丸棒で塞ぐ
割れの先端に穴を開けることで、割れの進行を抑えることが出来ると説明しました。
この穴を塞ぐように、丸棒を入れるとどのような効果が見込めるでしょうか?
丸棒では次に説明するチギリのように、割れを抑える力が働きません。
また、叩き込む必要があるほどの太い丸棒を入れれば割れを進行させてしまいます。
しかし、すっぽりと軽い力で収まる程度の丸棒を入れて、隙間を「割れの対策:割れを埋めて塞ぐ」の項目で説明したようなおがくず等で埋めてあげると、割れようとする力を逃がしつつ穴を塞ぐことができます。
▼仕上げ前の写真ですが、丸穴を埋め込んだ例。仕上げによりぐっと綺麗になります。
チギリほど効果は見込めないものの、ドリルだけあれば良いので、とても簡単に割れ対策をすることができます。
以下の記事で紹介している反り対策とセットで行うことで、十分な割れ対策になり得ます。
DIYにおける無垢材の「反り」対策まとめ【無垢材 × DIY】
チギリを入れる
割れ対策として昔から存在しておりデザイン上のアクセントになる方法が「チギリ」です。
形状はリボンのような形が一般的ですが、割れを抑えることができれば良いのでひょうたん型や円形など、多種多様な形が存在します。昨今ではチギリは割れ対策と言うよりはデザイン上のアクセントのために採用されることが多いです。
反り止めを入れる
割れの主たる原因は、木の反りです。
木が反ることで割れが広がったり、閉じたりします。
そこで、反り止めを入れることで割れを抑えることができます。
反りの対策を説明すると長くなるため、以下の記事で詳しく解説しています。
DIYにおける無垢材の「反り」対策まとめ【無垢材 × DIY】
木口を塞ぐ
木の割れは木口から発生することが多いです。
木口とは、木を横方向に切断した時の断面です。
木口は他の面に比べてかなり多く水を吸ったり吐いたりします。
つまり、木口は含水率の変化が激しい部分と言うことが出来ます。
木が乾燥する時は、主に木口から水が抜けていきます。
そのため、木材を保管する時は割れ対策として木口にボンドなどを塗ってフタをしてしまいます。
これにより、含水率の変化を防ぐことができるというわけです。
もちろん家具として使う木材にボンドを塗ったままというわけにはいきません。
そこで、木口だけ木の呼吸を妨げる=塗膜を形成する塗料(ウレタンニスなど)を使うことで、簡単に割れ対策とすることができます。
もちろん木全体をウレタンニスなどの塗膜を形成する塗料で塗装すれば、より一層効果が見込めます。
木口にオイルを良く吸わせる
木口の呼吸を妨げることで割れを予防することができると説明しました。
しかし、せっかく無垢の木を使うのだから塗膜を形成する塗料を使いたくない!という方もおられるでしょう。かくいう私も無垢の木にはオイルしか使わない主義です。
そこで、苦肉の策として木口にオイルを良く吸わせるという方法があります。
これはオイル塗装やオイル仕上げをする上で当たり前に行われることなのですが、DIYにおいては疎かにされることがあります。
先述の通り、木口は水を吸いやすいです。
つまり、オイルもよく吸います。
オイルを塗る際に気を付けて見てみてください。
表面や耳のある側面などと同じ感覚で木口にオイルを塗っていると、すぐに木口だけ乾いてしまうはずです。乾いてしまうということは、オイルを吸っているということです。
オイルは1度塗布して乾燥してしまうと、2度目以降は吸いが悪くなります。
そこで、1度目の塗布が最も重要です。
木口は1度オイルを塗った後もしばらく観察し、オイルを吸って乾いた場合にはすぐ重ね塗りして限界までオイルを吸わせてください。
まめにオイルを塗布する
多くの場合、木の割れの原因は乾燥です。
オイルを塗布することで、極端な乾燥を防ぎ、割れを予防することができます。
湿度が低い時期に限らず、定期的にメンテナンスとして軽い研磨とオイル塗布をしてやることで無垢の家具はぐっと長持ちします。
湿度の変化・直接風を避ける
最後に、使用環境に関するポイントです。
木の割れの原因は乾燥や湿度の変化です。
とはいえ、家具のために生活の快適性を失っては意味がありません。
そこで最低限以下の2点だけ気を付けてください。
ポイント1 冷暖房の風を直接当てない
1点目は、冷暖房の風を無垢の木に直接当てないことです。
ありがちなのは、ファンヒーターなど暖房の風が無垢のテーブルの脚に常にあたっているようなケースです。
エアコンの風も同様に注意が必要ですが、常に風があたらなければ問題ありません。風向きを「自動」などに設定して上下させるようにすれば十分です。
ポイント2 常に水に触れる場合はウレタンニスなど防水性の高い塗料を使用する
例えばキッチン周りの収納で、シンクに横付けして使用するような家具の場合には素直に防水性の高い塗料を使用しましょう。
私がよく使うのがこちらです。
水性でサラサラとしており作業性が極めて良いのですが、常に水に濡れているような環境でもへっちゃらです。
さいごに:割れは対策しなくても良い
さいごに、 反り対策の記事でも説明したように割れや反り対策は必ずしも必要ではありません。
無垢の木に対する敷居の高さの一因である反りや割れ対策ですが、実は何もしなくてもどうということはないのです。
一般的に私たちが購入できる木材は乾燥済みの木材です。
一度乾燥が済んだ木材の含水率は、あまり大きく変化しません。
つまり、割れが発生したとしてもある一定のところで割れの進行は止まります。
そして、季節が変わると割れが戻り始めます。また同じ季節がくると割れが広がります。
こうして季節によって割れた広がったり戻ったりを繰り返すわけです。
無垢の木の買い方の記事で説明したように、乾燥後の木材を選びさえすればそれほど割れや反り対策に神経質になる必要はありません。
もちろん割れ対策をすることによって、割れの程度が軽減されます。
プロが作る高価な一生ものの家具であれば、そう簡単に割れが発生しては許されぬのかもしれません。
しかし、無垢の木をよく理解し、趣味で作る家具にそれを求めるでしょうか。
割れも味として考え、季節ごとの変化を楽しむくらいの心持ちで良いのではないかと私は考えます。