柑橘類の育て方 レモンの品種と苗木の選び方

ガーデニング

レモンの自家栽培を始めるにあたり、品種と品種ごとの特徴、そして苗木の選び方を解説していきます。

▼レモンの育て方全般について、季節ごとに作業項目をまとめた記事はこちら。

このほかにも、一般家庭における自家栽培レモン(鉢植え/地植え)の育て方や栽培手法など、様々な知見をまとめています。

レモンの栽培方法に関する記事一覧

なお、レモン以外にもミカンやユズなど柑橘類全般に適用できる育て方のポイントとなっています。

無限に広がるレモンの品種

まず始めに、レモンの品種の広がりに関する基礎知識を紹介します。

レモンを始めとした柑橘類は、「交雑」(異種交配とも呼ばれる)が簡単に起こります。

「交雑」とは、異なる品種の柑橘類同士の実が成ってしまうことです。

例えば、レモンのめしべにオレンジの花粉が付着するとレモンとオレンジのハーフの実が成ってしまいます。このハーフの実から取れた種を植えると、またハーフの実を実らせる木が育つというわけです。

そもそもレモン自体が、元は別の柑橘類同士の交雑により生まれたとも言われているほどです。

一般的に流通しているレモンの品種のなかにも、元はレモン以外の柑橘類との交雑により生まれた品種ではないかと推測されている種も多く存在します。そうした品種のレモンは、通常のレモンとは異なり果実がポンカンなどのように大きかったり、レモンにしては酸味が少なく甘みが強いなどの特徴があることが多いです。

家庭での栽培でも、他の柑橘類との人工授粉により容易に交雑を起こすことが可能です。

レモンの品種と特徴

早速レモンの品種とそれぞれの特徴を解説していきます。

今回紹介するのは日本国内で手に入れやすい以下の5品種で、これら以外にも多くの交雑種を含む品種が存在します。

  • リスボン
  • ユーレカ
  • ビラフランカ
  • ポンテローザ
  • マイヤーレモン

リスボン

木の生育 非常に良い
とげの有無 多い
耐寒性 高い
酸味 強い
備考
日本国内では流通量も多く、耐寒性も高いため東北地方など寒冷な地域でも比較的育てやすい品種です。木の生育が良く、放っておくとどんどん育って大きな木になってしまいます。特に鉢植えする場合やスペースが限られる場合には、しっかりと剪定をすることで木の大きさを調整していく必要があります。地域や園芸の経験の有無を問わず誰にでもオススメできる品種です。

ユーレカ

木の生育 普通
とげの有無 普通
耐寒性 普通
酸味 強い
備考
日本国内では流通量も多く、リスボンほど木の生育が良くないため鉢植えやスペースの限られた地植えでコンパクトに育てたい方にオススメの品種です。また、リスボンに比べると横に向かって広がって育つ傾向があるため、木の形を綺麗に維持しやすいという特徴があります。リスボンと並んで多くの人にオススメできる品種です。

ビラフランカ

木の生育 やや良い
とげの有無 少ない
耐寒性 やや高い
酸味 強い
備考
ビラフランカはなによりとげが少ないという大きな特徴があります。「とげなしレモン」などという品名で販売されていることもあります。その他の特徴は、リスボンとユーレカの中間くらいです。木の生育はリスボンほどではないもののユーレカよりは良く、剪定をしなければどんどん大きな木に成長してしまいます。また、ユーレカとは違って木が上へ上へと伸びて行こうとする傾向があります。

ポンテローザ

木の生育 やや良い
とげの有無 やや多い
耐寒性 やや低い
酸味 やや弱い
備考
通常のレモンの3~5倍ほどの非常に大きな果実をつけるレモンです。他の柑橘類との交雑種と考えられており、果実は400g~500g程度まで大きくなります。木の生育が良くとげが多いなどリスボンに近い特徴を有しますが、日本国内で流通するレモンのなかでは耐寒性は低い部類に属しているため、寒冷な地域での庭植え栽培は難しいです。

マイヤーレモン

木の生育 やや良い
とげの有無 少ない
耐寒性 高い
酸味 やや弱い
備考
木の生育は良いものの、ユーレカと同じように横方向に育つ傾向があるため木の形を綺麗に維持しやすいです。また、耐寒性も高くとげも少ないなど良い特徴が多い品種です。その他の柑橘類との交雑種と考えられており、レモンとしては甘みが強く皮も薄いです。

品種の選び方

条件にあわせたオススメの品種を紹介します。

なお、品種を問わず木の大きさと実の数は比例します。

実をたくさん実らせるには、木を大きく育てる必要があります。一方で、木を小さく維持したまま育てる場合には実の量は限られてしまいます。

これは技術や経験で対処できるものではありません。

大きく育ててたくさん実らせたい場合

スペースがあまり制限されない庭植えができる環境があれば、木を大きく育ててたくさんの実を収穫することができます。

品種はいずれでも構いませんが、特に成長の早いリスボンはオススメです。

リスボンは木が上へ上へと成長する傾向があり、うまく剪定したり調整しなくては縦長の木になってしまいます。

この点ではマイヤーレモンを選ぶことで、自然と横に広がった形に育つ傾向が合って管理の難易度は下がるでしょう。

マイヤーレモンは、レモンとしては酸味が弱く甘みが強い傾向にあります。

収穫後にレモンらしい香りや酸味を活かした使い方をする場合にはリスボン、そのまま食べたり実をそのまま料理やお菓子作りに使う場合には酸味が控えめなマイヤーレモンがオススメです。

限られたスペースでコンパクトに育てたい場合

室内やベランダ、あるいはスペースの限られた庭植えで育てたい場合には、木の生育が強すぎないユーレカがオススメです。

木の生育がやや強いものの、マイヤーレモンも木が横方向へ育つ傾向があるため、剪定によって木をコンパクトに維持しやすいと言えます。

マイヤーレモンは、レモンとしては酸味が弱く甘みが強い傾向にあります。

収穫後にレモンらしい香りや酸味を活かした使い方をする場合にはユーレカ、そのまま食べたり実をそのまま料理やお菓子作りに使う場合には酸味が控えめなマイヤーレモンがオススメです。

室内で育てたい場合

レモンは日照さえ確保できれば室内でも栽培することができます。

しかし、生育が良い品種では剪定の度に多くの枝を切り落とすことになり、木への影響が大きいです。

そのため生育が強すぎないユーレカがオススメです。

香りや強い酸味を活かしたい場合

レモンと一言にいっても、すべての品種があの強い酸味と香りを持っているわけではありません。

一般的なレモンとして、特有の香りや強い酸味を活かしたい場合にはリスボン・ユーレカ・ビラフランカがオススメです。

酸味の強い柑橘類として活用したい場合

レモンとしてではなく、レモンらしい香りを持ちながらもマイルドな酸味と甘味を持った柑橘類としてお菓子作りやジュース作りなどに使いたい場合にはポンテローザやマイヤーレモンがオススメです。

特に果汁をたっぷり使ったジュース作りには実が大きいポンテローザが最適です。

苗木の選び方

苗木を選ぶときのポイントを紹介します。

葉がたくさんついた苗木を選ぶ

レモンの苗木の状態の良し悪しは葉の数で見ます。

レモンは一般的に、20~30枚の葉に対して1つの実をつけると言われています。

実際にはそれ以上の実をつけるのですが、この20:1の比率を越えてしまうと一つ一つの実に栄養が行きわたらずに実が落ちてしまったり、味が悪くなってしまいます。

また、そもそも木の栄養状態や管理状態が悪いと、葉が落ちてしまうため葉が疎らでスカスカになってしまいます。

レモンは葉の数が多い=状態が良いと考えてもらって構いません。

葉の状態が良い苗木を選ぶ

葉の数が多いと良いと言いましたが、葉の状態が悪くては意味がありません。

苗木選びの時点で病気や虫まで判別することは難しいと思いますが、葉が濃い緑色をしていて変色や欠損がないことを確認してください。

濃い緑色をした綺麗な葉がたくさん茂っている木が良いということです。

実がたくさんついた苗は要注意

特にホームセンターなどでは小さな苗木にたくさん実がぶら下がった苗木が販売されていることがあります。一見してたくさん実が成っている良い苗木と思われそうですが、注意が必要です。

レモンは2年に1回実ります。

「え?」と思われそうですが、何もしなければ2年に1度しか実が成らないのです。

正確には、今年実が実った枝には翌年実が付きません。

毎年実を実らせたい場合には、今年実らせたい枝を除いて花や蕾を摘み取ってしまう方法が有効です。

もし既に実をたくさんつけた苗木を買ってしまった場合、翌年は実が出来ずに2年後までお預けと言うことになってしまいます。

枝が多く太い苗木を選ぶ

苗木は流通の都合でコンパクトに剪定されて店先に並ぶことが多いです。

具体的には横に広がる枝葉を剪定して、1本の細長い形に整えられたものです。(棒苗と呼びます)

こうした苗木は安価に手に入るものの、購入後に十分に枝葉が成長して実をつけるために時間がかかってしまいます。

ホームセンターなど、苗木を専門としていないお店では棒苗が多いです。

最近はネットでも苗木が購入できますから、出来るだけネットや専門店で枝葉の充実した苗木を選ぶと良いでしょう。

また、枝や幹の太さは基本的に成長年数に応じて太くなります。

幹が太くしっかりとした苗木を購入する方が良いでしょう。

品種が明らかな苗を選ぶ

ホームセンターなど、苗木を専門としていないお店ではリスボンやユーレカなどの品種を明記せずに「レモン」として販売されていることが多いです。

一般的に「レモン」と書かれている場合には、リスボン・ユーレカ・ビラフランカの場合が多いです。「とげなしレモン」と書かれている場合にはほとんどがビラフランカでしょう。

いずれの品種であっても育て方は同じですが、味の特徴や耐寒性の違いなどがありますから、出来るだけ品種の明確な苗木を選ぶ方が良いでしょう。

さいごに

レモンの品種と苗木の選び方を解説しました。

日本ではやや耐寒性に不安のあるレモンですから、お住いの地域に合わせた品種のレモンを選ぶことが重要です。

また、収穫後の用途も考えて品種を選べるとなお良いでしょう。

▼レモンの育て方全般について、季節ごとに作業項目をまとめた記事はこちら。

▼その他の自家栽培レモンの育て方や栽培手法などは【レモンの自家栽培方法】カテゴリーからご覧ください。

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