今回は、100万円以下が当たり前の3シリーズ(E90/2005年~2012年)に注目してみたいと思います。
安く買って安く維持することに着目して各部をチェックしていこうと思います。
3シリーズ(E90)の概要
3シリーズ(E90)は、2005年に登場し、2008年のマイナーチェンジを経て2012年まで販売されていたミドルクラスセダンおよびワゴン、クーペ、カブリオレです。
モデルコードは、セダンがE90、ワゴンがE91、クーペがE92、カブリオレがE93です。BMWにおいてはワゴンは「ツーリング」と呼ばれています。
エンジンは、2Lの4気筒エンジンを搭載する320i、2.5Lの6気筒エンジンを搭載する325i、3Lの6気筒エンジンを搭載する330iなどがラインナップされました。特別なグレードや流通量の少ないグレード、中古相場が高いグレードは割愛しています。
トランスミッションは、6速ATが搭載されています。320iには6速MTの設定がありましたが、希少なためやや高値で取引されています。
マイナーチェンジによる差異は大きくありませんが、外観は実際に間近でみると写真で見る以上に大きく差を感じるでしょう。価格はマイナーチェンジ後であってもかなり落ちてきています。この3シリーズを最後に、環境対策が加速し、エンジンはターボ化してしまいます。
維持費で考える狙い目のグレード
オススメのグレードは320iもしくは325iです。
2つのグレードを選ぶのには理由があります。
この3シリーズはすべてのグレードが完成されており、甲乙つけがたいです。正直なところどのグレードを選んでも後悔することはないでしょう。
車両価格もほぼ最低ラインまで落ちており、マイナーチェンジ後も100万円以下で余裕で狙うことができます。
マイナーチェンジによる外観の差は意外と大きく、写真で見るとわかりにくいのですが、マイナーチェンジ後はグッとモダンになっています。
維持の観点から各部をチェック
エンジン
維持費の観点で見ると、本来は部品点数が少なく故障時の部品代や工賃が抑えられる320iをオススメするべきです。
なぜ6気筒の325iを含めたかというと、理由はエンジンの信頼性にあります。
この3シリーズ(E90)に搭載されたN46エンジンは6気筒エンジン以上にスムースで静か、ふけ上がりも良くパワフルで軽量、高い環境性能を誇ります。
しかし、このエンジンはいくつか不具合が起こりやすいポイントがあります。
ここでは詳細を割愛しますが、タイミングチェーンガイドの破損、オイル消費、ヘッドカバーやオイルフィルターハウジングなどいくつかの場所からのオイル漏れなどが散見されます。これらは定番の故障個所・オイル漏れ箇所として有名です。
このエンジンは多くのBMWの車に搭載されたエンジンです。そのために不具合の報告が多いという点は否めません。
それでは6気筒エンジンを搭載した325iの方が維持費が安いか?と言われればそうとも言えません。
6気筒エンジンは、すごくざっくりと言えば部品点数が単純に1.5倍です。つまり、故障自体は6気筒エンジンの方が起こりにくいが、故障した時は6気筒エンジンの方がお金がかかるのです。
維持費の観点でエンジンをまとめます。
4気筒の320iは、走行距離が伸びるとオイル漏れやオイル消費が増えがちです。
6気筒の325iなどは、オイル漏れやオイル消費には悩まされないものの、その他のふいの故障時に必要とする部品点数が多く、工賃もやや高額になるでしょう。
一長一短であり、最終的にいずれのエンジンであっても維持費はあまり差がでないのではないでしょうか。
トランスミッション
この3シリーズ(E90)に搭載されるトランスミッションは、定番のZF製の「ZF 6HP19Z」です。
輸入車に乗ったことがある人や、輸入車のトランスミッションについて調べたことがある人であれば、この型式にピンと来るはずです。そう、超定番のZF社製トランスミッションシリーズです。このトランスミッションは何者かと言えば、以下のような車にも搭載されています。
- BMW X3
- BMW 5シリーズ
- BMW 6シリーズ
- BMW 1シリーズ
- BMW Z4
型番が僅かに異なりますが、4WD版の同トランスミッションはアウディやVWの4WD車に搭載されており、A6やQ7、トゥアレグなどに搭載されています。
このように、多くの車種に搭載されている実績と信頼のあるトランスミッションと言えます。
タイヤ
タイヤは320i、325i共にスタンダードなモデルであれば16インチです。
非常に経済的で、ブリジストンのポテンザのようなハイスペックなタイヤを選択しても、2万円程度で事足りてしまいます。
ブレーキ
ブレーキはシンプルな片押しの1ポッドキャリパーで、1シリーズやZ4とも共用されています。社外品の定番のDIXCEL社製で見てみると、ブレーキディスクが3万円ほど、ブレーキパッドが1~2万円ほどで揃います。
滅多に交換するものではありませんが、これだけ安価に流通しているのは嬉しいポイントです。
減りが早いと言われるBMWのなかでも、その比較的軽量であるが故にブレーキの減りが少ないのも嬉しいです。ブレーキの減りは使い方に大きく依存しますが、渋滞の少ない道や高速道路を主体とする場合には10万km経っても交換せずに済む場合もあるほどです。
サスペンション
3シリーズはとにかく販売台数が多く、部品の流通量が豊富です。
ブレーキ同様サスペンションについても調べればいくらでも選択肢がある状況です。
例えばビルシュタイン製のショックアブソーバーは1台分で7万円を切る価格で流通しています。
ショックアブソーバーは気にならなければ交換する必要がない部品ですが、信頼できるメーカーの商品がこれだけ安価に手に入るのは嬉しいです。
その他
この3シリーズを含め、歴代の3シリーズに搭載される装備はすべて5シリーズや7シリーズに採用され、十分に試されてから3シリーズにも採用されます。
そのため、先進的なものを含めた各種装備は比較的信頼性が高いといえます。
iDriveやナビを筆頭に、いわゆる高級装備(快適装備や先進装備)は修理費用が高額です。5シリーズや7シリーズほど高級装備を備えない3シリーズは維持をする上では悩みの少ない良い車と言えます。
購入後の維持費と注意点
マイナーチェンジ後のモデルであれば、まだ10年と経たない新しいモデルです。
基本的には故障知らずで乗ることができますが、それまでの使われ方や維持の仕方によっては状態の悪い個体もあるでしょう。
車選びの際には是非以下の記事も参考にして、「アタリ」の個体を探してみましょう。
ポイントは走行距離に捉われないことです。
近所の買い物に使われていた車より、高速道路ばかり乗っていた車の方が車の状態は間違いなく良いです。
少なくとも「ハズレ」の個体を選ばない限りは、まだまだ故障知らずで維持にお金もかけずに乗ることができるでしょう。
不安があれば、当サイトでも相談をお受けしています。このままページを下にスクロールしていただくと連絡方法が記載されているので、困った時には是非ご活用ください。
BMWにおいて故障と言った場合には主に以下の4パターンです。
- オイル漏れ
- 水漏れ
- センサー類の故障
- 点火装置の故障
これら以外の故障は、耐久性や頻度をとっても国産車とそう変わらず、あえて心配することはありません。もちろんいずれ故障するでしょう。例えば国産車でも20年経った車でエアコンが故障しているのは珍しくありませんね。
上記4パターンを簡単に説明していきます。
先述の通りマイナーチェンジ後の3シリーズを購入するのであれば、これらの故障を心配するのはまだ早いでしょう。参考までにご覧ください。
オイル漏れについて
オイル漏れについては、以下の記事で細かく解説しています。
BMWのオイル漏れが発覚!修理が必要?緊急度や添加剤、安価な修理方法をご紹介
結論から言ってしまうと、オイル漏れと言っても基本的に緊急度が低いケースが多いです。修理を年単位で先送りにすることもできますし、そのまま乗り続けることもできます。
予算と相談しながら、修理するのであれば車検やその他の修理とセットにすることで工賃を節約すると良いでしょう。
水漏れについて
2000年台後半以降のBMWは、信頼性が向上しているように感じます。
例えば今から10年前の車両を見ても、ほとんど故障知らずで今なお走っている車が多数見られます。昔からBMWのゴムや樹脂パーツが弱いとは言われていますが、段々と改善が重ねられ、品質も向上しているようです。
水漏れに関してはオイル漏れと違って先送りするのは賢明ではありません。
しかし、一般的なホース類やタンクの交換であれば、せいぜい3~4万円程度です。DIYであれば1万円もあれば十分に部品が手に入るでしょう。
決して怯えるようなものではありません。
10年経っても壊れないことも珍しくない部品が、せいぜい3~4万円で直るわけです。
センサー類の故障について
センサー類の故障は症状が多種多様で偏には語れません。
20年近く壊れないものもあれば、5年で壊れるものもあり、運の要素が強いです。
主要なセンサーの部品代は数千円~1万円程度のことが多いです。詳細は以下の記事で解説しています。
点火装置の故障について
エンジンの燃焼のキッカケとなる点火装置については、不思議と昔からイグニッションコイルの故障が多いです。細菌の車両でも、整備記録を眺めると新車から数年のうちにイグニッションコイルを新車保証で交換しているケースがしばしば見られます。
残念ながらイグニッションコイルの故障は運の世界です。20年近く壊れないものもありますし、3年で壊れることもあります。故障しても不調は出るものの走行不能にはなりません。詳細は以下の記事で予防法と合わせて紹介しています。
まとめ
以上の通り、3シリーズは比較的維持の容易な車と言えます。
この世代の1シリーズと共通している部分も多く、3シリーズの車格を1シリーズと大差ない維持費で味わうことが出来ると考えると魅力的です。少し高額になりますが、ワゴン(ツーリング)やクーペという選択肢もあります。
このモデルを最後に、エンジンはターボ化され車重やサイズも増してしまいます。自然吸気エンジンを楽しめる最後の3シリーズと言っても良いでしょう。