美味しいレモンやミカンなどの柑橘類を収穫するために気温の下がる冬場を乗り越えるための 越冬 の手順を解説します。
▼レモンの育て方全般について、季節ごとに作業項目をまとめた記事はこちら。
寒さに弱い柑橘類
レモンやみかんを始めとした柑橘類は温暖な地域の植物で品種により多少の違いはあるものの寒さに弱いです。特に苗木を購入して3~4年目くらいまではまだまだ木も細く弱いため寒さの影響を受けやすいです。
一般的に外気温が‐3度を下回ると枯れて死んでしまうリスクが高まるとされています。ただし-3度を下回らなくても木が弱り葉を落としてしまうことがあります。関東以南であれば防寒対策は不要などと言われますが安定した生育と収穫のためには防寒対策は必須です。
柑橘類は冬でも葉を落とさない常緑の植物です。春になれば冬を越えて残った葉を使って光合成し花を咲かせて果樹を実らせます。そのため冬のあいだに葉が落ちると翌年の収穫量がガクンと落ちてしまいます。
余談:寒さに強い品種
数ある柑橘類のなかでも人気があるレモンを例にとると品種によっては多少耐寒性が高いものがあります。代表的なのがリスボンとマイヤーレモンです。
リスボンは寒さに強いもののとにかく貪欲に成長する品種です。特に鉢植えで育てる場合には大きくなりすぎて処置に困ることになりかねません。うまく剪定しながら木の大きさを維持していく必要があります。マイヤーレモンは同じく寒さに強いものの、オレンジに近い品種のためレモンらしい強い酸味に欠け皮も薄いです。レモンの用途によっては扱いづらい場合があります。
こうした寒さに強いと言われる品種でも霜が降りる地域ではやはり防寒対策をした方が安定した生育が望めます。
レモンの品種に関しては以下の記事で解説しています。
柑橘類の越冬
柑橘類の越冬と言っても2つの部位に分けて考える必要があります。
一つは地上に出ている「木と葉」の寒さ対策、もう一つは土の下の「根」の寒さ対策です。どちらか一方が寒さにやられてしまえば木全体が弱り枯れ死んでしまいます。根は土の下深くに広がっており、土の下まで冷え込むことはまずないため重要なのは地上部の防寒です。
地上部(木と葉)の防寒
地上部(木と葉)の越冬は寒冷地を除く地域でも、可能であればやっておいた方が良いでしょう。やり方自体は非常に簡単で費用もかかりません。
使用するのは「寒冷紗」です。
寒冷紗とは、その名の通り寒さを遮る布のことです。
ホームセンターや通販などで簡単に手に入ります。寒冷紗と言う名前でなくても園芸用の不織布で代用可能です。日中は日光を通し、通気性も良好、夜は厳しい寒さから木を守ってくれます。覆い方に特に決まりはありませんので適当にぐるぐる巻きにするだけで十分です。あまり重ねると通気性や透光性を損なうので重ね掛けはせず隙間なく覆うことが肝要です。この手の植物の防寒対策では風を遮ることが重要なので、隙間風が入らないように意識すると良いです。
基本的に隙間なくすっぽりと木を覆って、株本の枝葉の無い部分をヒモで軽く縛って固定します。木が小さいうちは周りに支柱や杭を数本打って寒冷紗で覆い隠す方法も有効です。
木の大きさや形に合わせて縛ったり寒冷紗を継ぎ足したりして木全体を覆い隠してください。光も遮られますが冬場の柑橘類は栄養や水をあまり必要としません。布を透過する光だけでも十分に光合成することができます。木が大きくてとても寒冷紗が巻ききれないという場合には無理に巻き付ける必要はありません。大きく育った成木であれば寒冷な地域を除けば寒さで枯れてしまうことはほとんどありません。
地下部(根)の防寒
地下部(根)の防寒は特に寒冷な地域で行うことをオススメします。寒冷な地域を除く関東以南では地上部の越冬対策をすれば十分でしょう。
庭植えの場合
庭植えの場合の対策は非常に簡単です。
木の根元周辺に「わら」を敷き詰めます。ホームセンターや園芸店、通販でも冬場が近づくとラインナップが増えてきますが、専用の「敷きわら」というものが販売されています。
これ以外にもマルチング資材全般が有効で、例えば株本をオシャレに彩るウッドチップ類や土壌の改善効果も見込める腐葉土を株本に敷き詰める方法も有効です。
鉢植えの場合
鉢植えの場合、可能であれば日当たりの良い室内に入れると良いでしょう。
室内に入れることが難しい場合には風の当たらない建物の影(ただし日当たりの良い場所)へ移動するだけでも有効です。それも難しい場合には「二重鉢」という手法で対策を行います。二重鉢とは文字通り鉢を更に大きな鉢のなかに埋めてしまう方法です。
大きな鉢に土を敷き詰めて鉢をいれ、周囲にも土を敷き詰めていきます。この時使う大きな鉢は鉢でなくても構いません。例えば発泡スチロールの箱や大きなバケツ、ポリ容器など適当な大きさの容器であればなんでも構いません。
これも難しい場合は、植木鉢の周りを梱包用のプチプチ(エアキャップ)などで囲むだけでも効果があります。ただし、水やりした水が抜けるように底部に穴だけはあけてください。
越冬失敗!冬に弱った柑橘類の回復方法
万が一越冬に失敗して葉が落ちてしまった場合、少し暖かくなってきた2月~4月ころに予後の対策を行います。
枯れてしまった場合と弱っただけの見極め方としては完全に枯れて死んでいない場合には冬があけて少し暖かさを感じ始めたころに小さな芽が芽吹き始めます。地域によって差がありますが「日中はダウンじゃ暑いかなぁ」という日がポツポツと出始めた頃に芽吹いていない場合は枯れてしまった可能性が高いです。
1.枯れた枝を切り落とす
まず始めに枯れてしまった枝を切り落とします。
枯れた枝と生きている枝の見分け方は枝の色を見ます。比較的若い柑橘類の枝は茶色がかった緑色をしています。年数が経った太い枝は一見して茶色いのですが、しっかりと緑色が残っているものです。
▼生きている枝の例
▼若い枝はほとんど緑色をしている
枝葉が枯れる場合は特に若く細い枝の先端の方から枯れ始めますから、細いのにやけに茶色っぽい枝がある場合には枯れている可能性があります。まずは先端付近を切り落としてください。切り口が乾燥している場合は枯れている証拠ですので更に手前にで切り落とします。これを繰り返して生きている部分まで切り戻します。
剪定には「剪定ばさみ」を使用します。普通のハサミでは難しい樹木の細枝を簡単に切断することができます。普通のハサミで無理に切り落とすと切り口が汚れ、木を枯らす原因になってしまいます。
2.長い枝を切り詰める
生きている枝であっても長いものは切り詰めます。枝の根元から2つか3つ程度芽を残しそのすぐ上で切り落としてください。寒さにやられて弱った木には大きな木全体に栄養を行きわたらせる力がありません。生きている枝であってもそのまま残してしまうと木全体に悪影響が及ぶことになります。
3.癒合剤を塗布する
枝を切り詰めた後の切り口には癒合剤を塗布します。カルスメイトなどが有名ですが安い上なかなか使いきれないほどの量が入っています。
使い方は簡単で切り口を覆い隠すように塗布します。細い枝の剪定ではわざわざ使う必要がないことが多いですが、越冬に失敗して弱った木には二次災害の可能性をできるだけ下げるために癒合剤を使っておくと良いでしょう。
さいごに
柑橘類の越冬のやり方と越冬に失敗した時の対策を紹介しました。
柑橘類は寒さに弱い木ですが、元々が強いですからなかなか枯れて死んでしまうことはありません。一部が枯れて、葉がすべて落ちてしまったとしてもきちんと対策をすることで2~3年後にはまた元気に実を実らせることができます。
▼柑橘類の育て方全般について、季節ごとに作業項目をまとめた記事はこちら。