【終の車探し#2】レガシィアウトバック(Limited EX) 実用性バツグンだがグラグラ揺れるSUV

スバル・レガシィアウトバックの最上級グレード「Limited EX」に試乗しました。

スバル・レガシィアウトバックはステーションワゴン風のSUVで、走行性能を重視するスバル車のなかでは珍しく実用性に傾倒したモデルです。販売は好調とはいえないようで来年には販売が終了し後継モデルも日本国内では販売されないとされています。

私はGTカーが好きで、そのなかでもBMW・5シリーズが特にお気に入りなのです。しかしもう良い年齢であることや、車好きな仲間たちと遠く離れた地に移住したことを機に車趣味をやめてお金のかからない車へ乗り換えるため試乗先を探しています。「車にお金を掛けずに残りの人生を」が趣旨の試乗記の第2弾です。

基本的には絶対評価としつつ、これまで試乗してきた車とも比較していきます。

× 内外装の安っぽさは変わらず

レガシィアウトバックはスバルのラインナップにおけるフラッグシップではありますが、相変わらず内外装は安っぽいです。特に内装に関しては最も手で触れ目を向ける機会がある大型タッチスクリーンのUIが信じられないほどダサいです。なぜこれを良しとしたのか信じられない反面、これまでのスバル車のインテリアデザインを考えれば納得せざるを得ないです。

外装もせっかく希少なステーションワゴン風SUVだったにも関わらず、SUVであることを強調するようなデザインになってしまいました(実際に地上高が高くなっている)。灯火類も相変わらず子供のおもちゃのようでコストを鑑みての妥協が感じられる仕上がりです。他に類を見ないほどのホイールベースの短さも安っぽさを加速させます。

〇 視界は超良好でサイズの割にバツグンに運転しやすい

レガシィアウトバックの最大の特徴と言っていいのが視界が極めて良好なことです。前回試乗したクラウンスポーツとはまさに真逆の存在で、何もかも目視で確認できるうえ、車体の形状も無駄に絞り込んだ作りになっていないため、信じられないくらい車両感覚が掴みやすく運転しやすいです。車体サイズも全長4900mm以下、全幅1900mm以下と昨今の水準で見れば扱いやすいサイズに収まっており取り回しに困ることはありません。

そしてこの視界の良さ、目視できる範囲の広さ、安全装備の3つが揃って体感上の安全性は極めて高く感じられます。

△ 乗り心地は良いがグラグラふらふら揺れる

乗り心地は良好で、これまでのスバル車の水準で考えると随一の出来です。弟分にあたるレヴォーグレイバックはコンパクトカーらしいガタガタと落ち着きのない走りをしますが、レガシィアウトバックはそれなりに落ち着きのある乗り心地の良さがあります。

とはいえ価格やSUVであるという不利を考慮したうえで乗り心地が十分良いだけであって、前回試乗したクラウンスポーツと比べた場合、ほとんど変わらないかむしろクラウンスポーツの方が乗り心地は良好です。

その一番の要因がとにかくレガシィアウトバックは車体の揺れの収束が遅いです。これは歴代のレガシィアウトバックに共通しており、あえてこうしたセッティングにしていると考えられます。綺麗な真っすぐな道を走っていても、ふいにちょっとした路面の凹凸やうねりで車体が揺れると収まりが悪いです。決して数十年前のSUV(とは当時は呼ばなかった)ほどひどくはないものの、昨今のSUVでは考えられないほど収束はゆっくりとしたものです。

〇 静粛性は良好だがバツグンに静かではない

静粛性はかなり努力のあとが垣間見えます。とはいえ高級車の領域には達しているとはいえません。路面状況に応じて騒音の侵入が急に悪目立ちすることがあります。もちろん路面によって騒音の発生量が異なるのですが、それをいかにチューニングし細部にまでこだわることができているかという点こそ高級車の証です。

実用車として十分な静粛性があり、前回試乗したクラウンスポーツと比べれば同等か僅かにうるさい程度です。こうして考えると19インチや20インチを装着したクラウンスポーツが存在していないことが悔やまれます。

〇 荷物はすごく乗る、そして積み下ろししやすい

車体はほどほどのサイズながら荷室空間は広大です。また開口部と荷室の段差も少なく車高の高さゆえに屈まなくても荷物を積み下ろしできますから腰の悪い身には非常に助かります。

私はコロコロと趣味を変えるところがあるのでこの広大な荷室スペースは魅力的です。多くのミドルサイズSUVが全長4700mm台と短いため荷室長に不満を感じてしまいますが、レガシィアウトバックであれば全く不満ありません。

× CVTは出来が悪くエンジンも余裕はない

スバルのCVTは相変わらず進化が見られませんが、1.8Lターボエンジンとの組み合わせは実用上十分なパワーを発揮します。しかし、踏み込んだときの加速はまったく感じられないと言っていいほどで、なおかつCVTのレスポンスの悪さも組み合わさって閉口する仕上がりです。

昨今のダウンサイジングターボエンジンらしく低回転から最大トルクを発揮するもののそれでもアイドリング~最大トルクまでのトルクが薄い領域をはっきりと感じられます。これに加えてCVTのダイレクト感の希薄さがより極低回転の余裕のなさに拍車を掛けます。

× 価格はそれほど安くない

車両本体価格だけを見ればお買い得に見えるレガシィアウトバックですが、前回試乗したクラウンスポーツと比べたときに標準装備が少なくオプション費用がかさみます。よほど節約しない限りは諸費用込みで500万円の大台に乗ってしまいます。

グラグラと揺れる乗り心地や内外装の質感の低さを気にしなければ、それ以外の多くの点で優れておりコストパフォーマンスが良いと言っても過言ではありません。また快適性についても高級感を求めない限りは十分に満足いくものです。

〇 ハンドリングは悪くない、運転は楽しめないこともない

ハンドリングは決して悪くありません。手ごたえのないクラウンスポーツと比べれば十分に楽しめるレベルです。1.8Lターボエンジンはパワーがないとはいえ、トヨタのハイブリッドシステムに比べればまだ意のままに操る余地があります。

総評 60点 チープさは残るもののよく頑張った実用車

総評としてはスバルらしく内外装は妥協の跡が見られますし、細部へのこだわりや高級感もありませんが、そのなかでよく仕上げられた1台だと思います。以前もレガシィアウトバックには試乗しており、その時もあと一歩の仕上がりが足りていないことを不満に感じていました。次のモデルチェンジでかなり良い出来栄えになるのでは?なんて評していたなかでの生産終了ですから本当に残念な1台です。

とはいえ冷静になって振り返ると、仮にも高級車という設定のクラウンスポーツと比べても価格差は総額で約100万円と大きくありません。運転のしやすさや安全性、控えめな見た目や積載性といった実用面でのプラス要素こそあれ、それ以外に特段優れたところが見当たりません。逆に普段目にする内外装の安っぽさは購入後に改善することも難しいうえ長年所有することを視野に入れると悩ましい出来栄えと言わざるを得ません。

クラウンスポーツ、レガシィアウトバックと試乗してきて目が肥えすぎていることを認めざるを得ないかもしれません。駆け抜ける喜び、コンフォート、上質さ。すべてを備えた5シリーズが基準になるとどうしても評価が厳しくなるのも致し方ないのかもしれません。5シリーズに対する絶大な信頼から心象に補正がかかっている感もあります。

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