太陽光パネルと蓄電池が災害時に頼りにならないこれだけの理由

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住宅設備としての太陽光パネルと蓄電池は新築物件やリフォームにおける定番のオプションです。補助金や電力会社によるリース制度などの後押しもあって導入を検討されている方も多いです。

太陽光パネルと蓄電池を導入することで日々発電した電力を蓄えることができます。災害で電気の供給が停止しても自家発電した電力と蓄電池に蓄えられた電力があるという安心感は大きなポイントです。日常の電気使用を賄うだけでなく余った分は売却して収益を得ることも可能です。

補助金やリース制度、月々の電気代や売電を考慮すれば十分に「元が取れる」というのが太陽光パネルと蓄電池を導入する最大のメリットと言えます。

しかし、電力の供給が停止した際の「災害備蓄」として考えたときは問題点も多く、これとは別にポータブル電源などの備えが肝要です。

理由1.移動できない

太陽光パネルと蓄電池の組み合わせが災害備蓄に適していない最大の理由は移動ができない点です。太陽光パネルと蓄電池は電気代を節約することができる魅力的な住宅設備ではありますが、災害備蓄ではありません。

台風や地震などの災害による被害に遭った際には家に留まることができるとは限りません。非常食や非常用トイレなど多くの災害備蓄は避難や移動にあわせて持ち運ぶことができますが、太陽光パネルと蓄電池は移動することができません。

理由2.災害時に故障するリスクがある

電力の供給が長く停止するような災害が発生した際には太陽光パネルと蓄電池自体の損壊が発生したり、システムの一部に不具合が発生して発電や蓄電が正常に機能しなくなる可能性があります。太陽光パネルは通常屋根の上に取り付けられますが、取付強度は屋根やその下地に依存しています。太陽光パネルの取り付けに用いられる金物は強度設計がなされていますが施工が完璧でない場合には強度が低下し、その結果は災害にあってみるまで判明しないことが多いです。

また、太陽光パネルは年々進化しているものの飛来物に弱いという弱点は今なお克服されているとはいえないため台風や住宅密集地における地震では飛来物による破損も大きなリスクのひとつです。

理由3.更新サイクルが長い

太陽光パネルと蓄電池を使用した発電システム全体の寿命は一般的に15年程度とされることが多いです。太陽光パネル自体は適切なメンテナンスを行うことで30年以上の寿命が期待できますが、出力は徐々に低下します。蓄電池も日々の使用で少しずつ劣化し、発電システムを構成する電子部品は10年を超えると故障のリスクが高まります。

しかし、実際には特段の不具合がなければ定期的なメンテナンスを行いつつ20年以上の寿命が期待できます。20年以上の寿命が期待できるがゆえに更新サイクルは長いです。また「そろそろ寿命だから交換しよう」と積極的に検討される方も多くなく、大きな故障が出るまでは使い続けようとする方が大半を占めます。

災害備蓄はいざという時のために常に備蓄の状態を管理することが求められます。非常食ではローリングストックといって、期限の近づいた非常食は消費し新しい非常食に買い替えます。しかし、長寿命を誇る太陽光パネルと蓄電池はいくら劣化が進んだからといってそう簡単に更新できるものではありません。いざという時に性能が低下していたり、いざという時に経年劣化と災害により故障が発生することは避けられないでしょう。

大容量の蓄電池と太陽光パネルが被災時に必須ではない

こうしたデメリットを解決する手段が昨今注目を集めている「ポータブル電源」です。

2024年現在の実勢価格では「1kWh = 10万円」程度で流通しています。大抵の家電を問題なく動かせる容量を持つ1kWhモデルは10万円程度、更に消費電力の大きなレンジやIHヒーターを動かせたり、エアコンも長時間動かせる2kWhモデルは20万円程度です。

オプションではソーラーパネルが用意され、比較的小型安価な200W程度のソーラーパネルであっても快晴時に遮蔽物の少ない場所で展開すれば1日で1kWhのポータブル電源をフル充電することも可能です。

災害備蓄としては持ち運びのことを考えて1kWh程度のモデルを用意しておくとスマートフォンの充電や必要最低限の家電の使用などが可能です。更に2kWh程度のモデルを用意すればエアコンを始めとしたある程度快適性を確保するための贅沢な使い方も可能になります。ソーラーパネルを併用すれば2kWhのポータブル電源を2台用意することでエアコンを24時間稼動することさえ可能になります。

また、当然のように家から避難が必要なときは非常食や非常用トイレなどとあわせて持ち出すことができます。ソーラーパネルやバッテリー技術は年々進化しており、住宅設備と違ってフレキシブルに買い替えや買い足しができる点も災害備蓄として魅力的です。

近年では最大級の災害となった東日本大震災を例にとると、震災発生後の3日程度で大半の住宅への電力供給が再開しています。発電量の不足によりその後も輪番停電を始めとした短期的な停電はありましたが、電力供給が再開するまでの一時の備えとしてはポータブル電源はベストに限りなく近い選択肢と言うことができます。

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