近年のBMW各モデルに搭載されるダウンサイジングターボエンジンである4気筒エンジンの「B48」や6気筒エンジン「B58」は、数々の技術により高い環境性能と実用性を得た一方で旧来のBMWのエンジンとかけ離れたレスポンス、サウンド、フィーリング、走る楽しさで車好きや業界に衝撃を与えた問題作です。
ずいぶんと前に始まったエンジンオイルのロングライフサイクル化の影響を受け、指定されるエンジンオイルは認証を受けた高性能な化学合成油のみとなっています。
0W-30指定に20W-50の鉱物油を入れていいの?
そんなN48エンジンは、0W-30や5W-30の認証を受けたオイルが純正で指定されています。私自身は長らく0W-40のMobil1を使用していましたが、あるタイミングで20W-50の鉱物油に切り替えました。理由は主に4つです。
似たような考え方を持つ方も多いかと思いますが、昨今のクリアランスを詰めたダウンサイジングターボエンジンに安価で硬い鉱物油を使うことには躊躇してしまう方も居られるかもしれません。ターボチャージャーの仕組みは恐ろしいほどに進化していませんが、とにかく高回転で回る小さなファンを潤滑するためにオイルへの依存度が高く故障リスクも高いです。そのためオイルが劣化したまま走行を続けると急速に損耗が進みます。安いオイルだろうと高いオイルだろうと適切なタイミングで交換することが重要です。
「安価なオイルを高頻度で交換する」、「高価なオイルを低頻度で交換する」(BMWのディーラー推奨はこちら)は昔から意見がわかれるところです。私自身、ディーラー推奨の交換頻度でメンテナンスを行ったBMWのエンジンが10万km程度で内部が真っ黒に汚れオイル上がりを起こした様子を見て、オイルが安価であろうと高価であろうと一定の頻度で交換するようになりました。
理由1:エンジンの消耗と保護
1つ目の理由はエンジンの消耗と保護です。
一般的にエンジンオイルは粘度が高い方がエンジン内部の消耗を防ぎ、すでに消耗がある場合にもオイルの力で油膜切れによるシール性能低下を防ぐことができます。
私が今乗っているF31型の3シリーズツーリングはエンジンの出来を含め不満も多い車ですが、ほかに良い車が見つからないなかで次の車が見つかる見込みも立たず、限界まで乗り続けようと考えています。そんなF31もバンのように使い倒して走行距離が10万kmを超えています。まだまだ現役ではありますが、ややオイル消費が増えた気がすることと今後も長く乗り続ける可能性があるため粘度の高いオイルへ切り替えることにしました。
理由2:やかましいノイズ
2つ目の理由はノイズ対策です。
このN48エンジンは新車時点でも、現行モデルに搭載された展示車両であってとんでもなくやかましいノイズを鳴らします。エンジンで高い評価を受けていたBMWがここまで落ちぶれたかと肩を落としそうになるような、ディーゼルエンジンのような音をかきたてます。
もはやこんなノイズにも慣れたもので、車好きから「ディーゼル?」と聞かれるのにも飽き飽きしていたわけですが、オイルの粘度を上げれば少しはマシになるかもしれないと思い粘度を上げることにしたわけです。
理由3:へたくそなパワートレイン制御
3つ目の理由はパワートレイン制御をマイルドにするためです。
このB48エンジンはエンジン自体の出来も悪いですが、パワートレイン全体の制御もお粗末です。トルク変動やスムースさに欠ける加速など、いくらでも制御可能なポイントを残したまま製品化されており、究極のドライビングマシンを謳っていたBMWはどこにいってしまったのかと肩を落としたくなる気分です。エンジンオイルを硬くすると、体感できるレベルで吹けあがりが悪くなります。
逆に吹けあがりをよくするためにクラシックなスポーツカーに低粘度の化学合成油を入れて、オイルを漏らしながら吹けあがりの良さを追求する層もいるほどです。粘度を上げることで、お粗末なパワートレイン制御をマイルドにしてごまかせるのではないかと、淡い希望が粘度を上げるひと押しになりました。
理由4:オイル交換頻度
最後はオイル交換頻度です。
BMWが高性能なオイルを指定する理由はいろいろありますが、大きな理由はフリクションを減らすことで質感の高いエンジンにすることや、高い温度帯で管理されるオイルの劣化を考慮していることや、ロングライフサイクル化の一助とするためです。要するにエンジンオイルの機能面で認証を受けた高性能オイルは必要ないということです。
私はかねてより年に3~4回、だいたい3か月~4か月に1度のペースでオイルを交換しています。田舎道や高速道路の走行がメインで、エンジンオイルの劣化が少ない乗り方をしていることを加味するとなかなかの高頻度です。そのためわざわざ価格が高いエンジンオイルを使用する必要がないわけです。
N48エンジンに20W-50の鉱物油を使用した結果
N48エンジンに20W-50の鉱物油を使用した結果はというと、きわめて良好です。
騒々しいノイズは気持ち程度ですが和らぎ、アクセルペダル操作に対するトルク変動も緩やかになることで往年のBMWの6気筒エンジンのようなフィーリングを0.1%くらい感じさせてくれます。個人的には静かにシュンシュン回る往年の4気筒エンジンの方が好みですが、多段ATとダウンサイジングターボエンジンの組み合わせでは不可能でしょう。
N48やN58など近年のBMWのダウンサイジングターボエンジンはオイル温度の管理が厳しく、普通に乗っているだけでも「えっ?」と思うような温度でオイル温度が推移します。そんな時も50という粘度が安心感を与えてくれます。
始動性は冬場でも良好です。オイル交換時の古いオイルの状態を見てもまだ粘度がありしっかりと機能していることがわかります。体感では半年5000kmくらいは余裕で使えそうです。エンジンをより良く保ちたいならもう少し短めのスパンが良いでしょう。安いし。
ちなみに使用しているオイルはこちら。
国産車でもユーザーの多いよく聞くお手頃オイルです。本当になんでもOK。
1Lの価格は余裕で1000円を切り、ショップで交換してもらって工賃を含めても1万円以下。これなら年に4回でも5回でも交換しようと懐は痛みません。
長く快適に車を維持したいなら安いオイルを高頻度で
これは過去の数々の記事でも触れていることですが、エンジンオイル交換は車を長く良い状態に保つために重要です。
まともな流通経路で販売されているようなオイルであれば、たとえ私が今使用しているSUNOCO MARVICのような格安オイルであっても最低限の品質は維持されています。エンジンオイルを高頻度で交換して良いことはあっても悪いことはありません。
エンジンオイルのロングライフサイクル化の急先鋒であるBMWでさえ、エンジンオイルの交換サイクルを長くすることで車の状態を維持し消耗を抑えられるなどと一言も明言していません。長く車を快適に維持するためには安くても良いので高頻度でのエンジンオイル交換することが肝要です。エンジン周辺の故障を未然に防ぎ、エンジン自体の消耗も防ぎます。故障が減るということは維持費も抑えられるうえ、不要な部品交換が減って環境負荷を減らす効果もあります。
高価なオイルには理由があります。
量産効果が得られやすいエンジンオイルにおいて、なお高価であるということは製造コストが高いということです。製造工程が複雑かつ長く、製造にかかる環境負荷が安い鉱物油の比にならないほど高いため高いオイルをあまり高頻度で交換するのはおすすめできません。あまり難しく考えずに純正指定や認証オイルを半年に1回程度交換するか、安いオイルを3か月~4か月に1回交換するかのいずれかを選べば長く乗り続けられるはずです。
エンジンオイルの交換サイクルを長くするメリットは「オーナーの手間が減る」という1点に尽きます。少しでも車を大切に思う気持ちがあるのであれば、ぜひエンジンオイルの交換頻度を少し上げることを検討してみてほしいと思います。