美味しい柑橘類の果実を収穫するために、春(3月~5月)にやらなければいけない作業をまとめています。
詳しくは作業項目ごとに解説しますが、この3月~5月という時期は目安です。地域により寒暖差があるため、暖かい地域ではやや早く、寒い地域ではやや遅くなります。
▼他の季節の作業内容のまとめはこちらのリンクからご覧ください。
春は柑橘類の活動再開期
柑橘類の果樹は冬のあいだ栄養や水の吸収と成長が鈍ります。冬を越えるために動物で言うところの冬眠のような状態に入り、春になると冬眠からあけて活動を再開します。
冬は控えていた水やりも春以降は3日に1回程度(土の表面が乾いたら)は行ってください。活動を再開した柑橘類は成長を始め、秋の終わりにかけて新しい芽が生え枝葉を伸ばし花を咲かせ実をつけ続けます。ただし春と言っても3月はまだまだ気温が低い日も多く、枝葉がぐんぐんと伸び成長が盛んになるまでは土の乾燥状況を見ながら水をやりすぎないようにすると良いです。
この春のあいだについた芽はその年よく実をつける優秀な枝葉に成長します。夏や秋にも新しい芽が出ますが、夏や秋の芽が成長しても時期的にあまり実をつけない傾向にあります。このため春の芽を大事にすることが柑橘類の果実をたくさん実らせるポイントです。
特に春の始めは寒さもまだ残り成長が本格化していない年に1度の機会です。このタイミングで剪定や植え替え、苗木の植え付けなど木への負担が大きな作業を終わらせておく必要があります。
剪定
剪定は3月の初旬ころに行います。目安としては春に芽吹き始める新芽が出始めたころです。新芽が出る直前が望ましいですが判断が難しいです。そのためよく観察して、新芽が見つかったら剪定の時期だとお考え下さい。地域によって時期は前後しますが寒い日が減って「もうダウンは必要ないかな?」となったころが頃合いです。
剪定の必要性
剪定は必ず行わなければいけないものではありません。以下の3つの条件のいずれかが見つかった場合のみ剪定を行います。
- 大きく成長しすぎた部分がある
- 枝葉が密集しすぎている
- 長く伸びすぎた枝がある
剪定のやり方
剪定は詳しく説明すると長くなるため、以下の記事にまとめてあります。
この春先に行う剪定の目的は「密集しすぎな枝葉を減らす」ことにあります。厳密にいえばほかにもいろいろとあるのですが、収穫量を最大化する必要のない趣味の果樹栽培であればそこまで神経質になる必要はありません。
植え替え
植え替えは剪定と同じく寒さが和らいだ3月の初旬ころに行います。時期としては剪定と全く同じです。春の新芽が芽吹き始めたころが頃合いです。
植え替えの必要性
植え替えは必ず行わなければいけないものではありません。
鉢植えで柑橘類を育てている場合で、なおかつ以下の3つの条件のいずれかに該当した場合には行ってください。
- 水はけが悪く、水をやってもすぐに土に染み込まない
- 鉢底から根が飛び出ている
- 2年以上植え替えをしていない
2~3年に1度は植え替えをすることが推奨されています。また、これ以上鉢を大きくできない場合にも一度取り出して根を整理してやると良いでしょう。
植え替えのやり方
植え替えの手順はとても簡単です。
必要なものは以下の3点です。
- 今の鉢より一回り大きな鉢(鉢を大きくしたくない場合は不要)
- 土
- 鉢底石
鉢は基本的に一回り大きな鉢へ植え替えます。場所の都合等で鉢を大きくしたくない場合には、鉢を大きくしない植え替えの方法もありますので後程紹介します。
土は一般的な園芸用の土で構いません。もし選択に悩まれるのであれば、柑橘類に適した土も販売されています。
鉢底石は、鉢底から土が流出しないためのものでなんでも構いません。
植え替えの手順
1. 柑橘類の木を引き抜く
まず始めに柑橘類の木を鉢から引き抜きます。柑橘類の木は丈夫ですから、幹の根元を掴んでグッと上に引き上げます。簡単に抜けない場合には揺らしたり、鉢を叩いたりしてみてください。
可能であれば鉢を横倒しにすると作業がしやすいですが、枝葉が地面にぶつかって傷つけたり折ったりしないように注意してください。樹脂製の植木鉢の場合には破壊する方法もひとつの手になります。
2. 根を軽くほぐす
引き抜いた柑橘類の根を軽くほぐし、古い土を落とします。硬い部分を無理にほぐす必要はありません。長く太い根が飛び出している場合には、短く切り詰めてやると根の発育が促されます。黒くひょろひょろとした根は手で軽く取り除きます。
もし鉢を大きくしない場合には、ここで根が一回り小さくなるように全体的に切り詰めてください。
3. 植え替える
新しい鉢に鉢底石と土を入れます。柑橘類の木を入れて丁度良い高さになるように土を入れます。柑橘類の木を入れて、隙間を土で埋めます。先ほど紹介した柑橘類に適した土や、一般的な培養土には肥料が十分含まれているため植え替えの際にあえて肥料を入れてやる必要はありません。
4. 水やりをする
最後にたっぷりと水をやります。新品の土は水を弾いたり水を想像以上に吸うことがあります。鉢の下から水が流れ出るまでたっぷりと水をやります。
受粉
春になると早いものでは3月の後半くらいから花が咲き始めます。柑橘類は自然受粉も可能ですが、人工授粉作業を行うことでより実をつける可能性を高めることができます。特にハチやチョウなどの受粉を手伝ってくれる昆虫の少ない環境では人工授粉がより重要になります。
また、春になると害虫もつきはじめますので害虫の発見もかねて人工授粉作業をすることをおすすめします。
人工授粉のやり方
人工授粉のやり方はとても簡単です。柑橘類は一つの花のなかにめしべとおしべが両方存在する両性花です。めしべとおしべのあるあたりを、筆でかき混ぜるようにしてやれば人工授粉は完了です。1号~2号程度の平筆が使いやすくおすすめです。毛が硬すぎず小さめの筆ならなんでもOKです。
たまにめしべがない不完全な花が出来ることがありますが、これは栄養状態が悪い場合に多く発生します。また、自然に花が落ちてしまう場合や軽く触れただけで花が落ちてしまう場合も同様に栄養不足が原因であることが多いです。こうした弱い花は実をつけても落ちてしまうことになるので気にせず作業をして構いません。
肥料の与えすぎは肥料やけを起こす原因になりますので、適切に肥料を与えることを心がけてください。詳しくは以下の記事で肥料の与え方を解説しています。
肥料
春半ばまでは冬の終わりに与えた肥料の効果が持続しています。使用する肥料や施肥の方法にもよるのですが、一般的に春の後半(4月末~5月)には追肥が必要になります。時期としては、柑橘類の花がたくさん咲き、桜の花が散ったころが頃合いです。
柑橘類の施肥は春~秋のあいだに常に肥料を効かせ続けることが重要です。少量の肥料を毎月与えたり、液体肥料を毎週与えるなど施肥の方法はたくさんあります。今回は一般的な遅効性の化成肥料(柑橘類の専用肥料を含む)を3回に分けて与える方法をもとに解説します。
肥料の必要性
柑橘類は春から秋にかけて成長を続け、花を咲かせ続けます。この特性から、美味しい柑橘類をたくさん収穫するには春から秋にかけて肥料の効果を持続させ続けることが重要です。柑橘類が活動を再開させる前の冬の終わりにまとまった肥料を与え、春~秋にかけては肥料を3回ほどに分けて与えて肥料を効かせ続けます。
春の後半には肥料が切れ始めるため、肥料を追加で与える必要があります。
肥料のやり方
肥料は規定量の3分の1程度を与えます。詳しくは以下の記事で解説しています。
また、大粒で肥料の効きが長持ちしやすい専用肥料を使えば肥料の頻度を減らすことができるうえ、適切な施肥の時期や分量もパッケージに記載のある通りにすれば良いので簡単です。
害虫対策
春になって暖かくなると虫も活動を増し始めます。柑橘類につく害虫のなかではアブラムシが目立ち始める時期です。特に春に芽吹いたばかりの新しい葉の裏側などにアブラムシがついていることが多いです。
水で洗い流すなどして除去するか、殺虫剤を使っても構いません。私は春以降になると、定期的にこちらの殺虫剤を散布しています。
アブラムシに対しては1カ月程度持続する効果があり、病原菌を防除する効果もあります。その他にも、柑橘類につきがちなカイガラムシ、ケムシ、ハムシ、アザミウマなどたくさんの虫や病気に効果が見込めます。
さいごに
春の柑橘類栽培のポイントを紹介しました。
▼柑橘類の育て方全般について、季節ごとに作業項目をまとめた記事はこちら。