BMW・3シリーズ(F30/F31)のエンジンオイル交換の流れを「抜き取り」から「コンピューターリセット」まで徹底的に解説します。
車両は320i(後期・LCI)です。同じ2Lターボエンジンを搭載した多くの車種でも同じ手順で交換作業が可能です。エンジンオイル交換は車のメンテナンスにおいて初歩的なメンテナンスと思われがちです。しかし一歩誤ると車の心臓部であるエンジンに不具合を来す原因となります。くれぐれも慎重な作業を徹底し、自信がない方は素直にカーショップやディーラーに整備を依頼してください。
※必要な道具と消耗品は記事の最後にまとめてあります。
1.ジャッキアップ/スロープ
エンジンオイルの抜き取りを行う前に車の下に潜るためのジャッキアップもしくはスロープに車を乗せます。
エンジンオイル交換はボンネット側から作業する「上抜き」と車の下に潜って作業する「下抜き」に大別することが出来ます。F30型の3シリーズは、「上抜き」に必要なオイルレベルゲージが存在しないモデルもありますのでここでは「下抜き」の作業手順を解説します。
「下抜き」はエンジンオイル交換の最も基本的な手法です。エンジンやトランスミッション、その他の補器類などを下側から確認できる貴重な機会ですので是非「下抜き」をしつつ周辺に異常がないか確認することをオススメします。
さて、「下抜き」をするには車を持ち上げる必要があります。
一般的にはジャッキとジャッキスタンドを併用して行いますが傾斜がある戸建ての駐車場や、貧弱なアスファルトの駐車場では非常に不安定で危険な作業となります。もちろん砂利や芝生の上でも厳禁です。
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そこでオススメなのが「スロープ」を使用する方法です。
ご覧の通り「スロープ」をタイヤの前に設置して車を登らせるだけですからとっても簡単かつ安全な方法です。これなら車の下に潜る時も怖くありませんね。
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私は軽量・頑強でなおかつ車の下に潜れるだけの高さもあるこちらのスロープを長年愛用しています。分割して収納できる点もポイントが高いです。ただし高さのあるスロープは特にローダウンされたMスポーツモデルなどではバンパーと擦れることがあるので注意が必要です。逆に高さの低いスロープでは車体の下に潜るだけのスペースが確保できません。
2.オイルを抜く
続いてオイルを抜き取ります。ジャッキアップもしくはスロープに乗せた車の下に潜るとこんなフタが目に付くはずです。
BMWのエンジンは通常の車に比べてやや後方にありますから結構奥まで潜り込む必要があります。このフタはD型の樹脂パーツでロックされています。D型のロックは一文字の溝がありますから、マイナスドライバーなどでくるっと回転させてフタのロックを解除します。
フタを開けるとドレンボルト(エンジンオイル抜き取り用のボルト)が見つかります。
ボルトの頭は17mmです。モデルによっては六角穴のパターンもあります。
レンチを使って取り外します。カバーがあるため短めのエクステンションが必要です。外すとダバーっと出てきます。
事前に暖気しておくとオイルが暖まってスムースに流れ出てきますが、あまり暖気するとオイルが高温になって危険なので近所をぐるっと1~2分かけて回ってくれば十分です。油温計の針が動き出すころにはかなりの高温になっているので油温計の針が動き出さなくてOK。
オイルを抜き取る時は一般的にこのような商品を使って廃油をキャッチして処分します。
箱を開けると中には布や綿のようなものが詰まっておりオイルを吸収してくれます。多くの市町村では燃えるゴミとして処理することが可能です。食用油も吸着させて燃えるゴミに出すと思いますが同じような処理方法です。
外したドレンボルトがこちらです。
茶色いワッシャーがドレンワッシャーです。
潰れることで密着面の凹凸を埋めて機能するためドレンボルトを外した際には交換必須です。(別に交換しなくても漏れることはほぼないけど)ドレンワッシャーは純正部品を探しても構いませんが、内径12mmの一般的な銅ワッシャーで全く問題ありません。国産車用、輸入車用など表示がある場合もありますが内径12mmならいずれでも問題ありません。
もしオイルエレメント(フィルター)も交換する場合にはオイルエレメントに付属しています。
オイルエレメントはモデルによって品番や形状が異なる場合がありますが、今回の車両の場合には「11428575211」という品番でした。
しばらく放置してオイルが十分に抜けきったら新しいドレンワッシャーを取り付けたドレンボルトを取り付けます。
締め付けトルクはワッシャーの潰れる感触が手に伝わって来る程度です。あまり強く締め付ける必要はありません。本来はトルクレンチを使用が推奨されています。
最後にフタを元通り締めましょう。ロックも忘れずに。
ここまで来たらあと半分です!
3.オイルを入れる
続いてオイルを入れていきましょう。今回使用するオイルはこちら「Mobil1 0W-40」です。
私はコストコなどで販売されている輸入品のプラスチックボトル(1本あたり約1L)を使用しています。4L缶や20Lのペール缶でも良いのですが、プラスチックボトルの方が扱いやすく捨てやすいため好んでこの1Lボトルを愛用しています。BMWは純正オイルの使用を勧めていますがどのオイルでも構いません。
最近の大小2段階のターボチャージャーが搭載されたモデルで鉱物油はどうかと思いますが、合成油として売られていれば安物でもなんでも構いません。ただし安いオイルを使うのであれば交換スパンを短めにしましょう。
なお、この手の1Lボトルはコストコだけでなく、以下のようにネットショップでも販売されています。
海外市場向けなので内容量は正確には1Lではなく946mlです。
ボンネットを開くには運転席足元のレバーを2度引きます。ど真ん中のエンジンのそのまたど真ん中やや左にオイルフィラーキャップが見えます。
これがオイルフィラーキャップです。何やらツブツブした謎のゴミが溜まっています・・・何かのフン??
オイルフィラーキャップを開きます。やっぱり何かツブツブしたゴミが溜まっている・・・今度掃除しないと。
そしてエンジンオイルを投入していきます。
さて、ここで問題になるのがエンジンオイルの量です。
以前のBMWのマニュアルにはエンジンオイルの量が記載されていたはずですが、いつの間にやらエンジンオイルの量は記載しなくなってしまったようです。F30型の3シリーズにはいくつかエンジンのバリエーションがありますが、昔からのBMWオーナーである私の感覚では2L程度の4気筒エンジンなら4.5L程度。3L前後の6気筒エンジンなら6.5L程度だろうと予想が付きます。
ネットで検索すると4.25Lという情報もありますが、英語で検索すると約5Lと記載されているページが多いようです。こういう時はとりあえず少なめに入れて様子を見るのが正解です。私の場合には、2L4気筒のターボエンジンが搭載されたモデルです。
今回はオイルエレメントを交換していないことも加味してとりあえず4L(正確には3784ml)投入してみました。やや心許ない量だったのでもう1ボトル開けて300ml程度追加しておきました。
こんなテキトーでいいの?と思われそうですが、問題ありません。
オイルの量なんて大体合ってればOK。基本的にオイルパンに溜まったオイルをポンプで送り出す機構なのである程度アバウトでも大丈夫な設計がされています。もちろん少なすぎ/多すぎのまま長期間走行すると問題が生じることもありますが、とりあえずエンジンをかけてちょっと走るくらいはなんともありません。そもそもオイルが少なすぎれば警告が出ます。
4.オイルレベルの確認
さて、エンジンをかけてオイルレベル(オイルの量)を確認していきましょう。この車両にはオイルレベルゲージがありませんから、車載コンピューターで確認します。
iDriveのMenuボタンを押下し、メインメニューから車両情報を選択します。
続いて車両ステータスを選択します。
続いてエンジンオイルレベル測定を選択します。
測定開始を選択します。
なお、測定をするには暖気完了後に平らな場所に停車する必要があります。エンジンオイル交換直後はオイルが冷えているはずなので油温計の針が安定するまで走行してください。
測定中はアイドリングが上昇します。どうやら昔ながらの単純なセンサーによるオイルレベル計測とは異なるようです。
測定完了!約4Lのオイルを補充してちょうどmaxとminの中間でした。
5.コンピューターリセット
続いて車載コンピューターをリセットしましょう。
このリセット作業を行わなければ、いずれエンジンオイルの交換を促すメッセージが表示されます。メッセージが表示されるだけなので無視しても良いですが、鬱陶しいのでリセットしましょう。ちなみに後期型からは後述する診断機を用いたリセットが必要です。
前期型の手順
まずはブレーキを踏まずにエンジンスタートボタンを押下してイグニッションオンの常態にします。
次にメーター隅にあるボタンを長押しします。
するとメンテナンスメニューが表示されます。ここでボタンをポチポチ押すと、各種消耗品類のメンテナンススパンを確認することができます。
エンジンオイルを選択した状態で長押し。リセットしますか?と聞かれるので長押し。
リセット中。
失敗!
僕の車両はこの方法ではリセットが出来ませんでした。残念。
後期型の手順
後期型からはどうやらここまで説明した手順ではリセット作業が出来なくなっているそうです。
そこで登場するのが診断機。私は長年BMWをDIYで維持しているので3台の診断機がありますが、こちらのANCEL BM700はその中でも最も新しいモデルでF30型にもしっかり対応しています。
残念ながら国内のオンラインショップでは見付からず、AliExpressで購入した経緯があります。ちなみにオイルレベルのリセットやその他の診断作業で定番ツールと言えるのがこちらのCarlyです。
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スマートフォンアプリと連携して使用します。実績は豊富ですがやや高額なのが難点ですね。
ANCEL BM700でのオイルリセット
さて、他人にオススメするのであればCarlyなのですが、個人的にスマホに余計なものを入れたくない派の僕としてはシンプルにOBD2端子に接続して電源供給を受ける有線方式のスキャナーが好みです。
そこでこのANCEL BM700を購入しました。(ANCELは2台目)BM700をOBD2端子に接続します。OBD2端子は運転席足元にあります。昔に比べると随分良心的な位置になりました。
接続して、イグニッションオン(ブレーキを踏まずエンジンスタートボタン押下)にします。メニューが表示されるので、「Oil reset」を選択します。
いくつかの注意事項や説明が表示されるのでOKを選択していき、successfully cariied outの表示が出ればリセット完了です。
車載コンピューター上でも距離が16000km、交換時期は1年後にリセットされていることが確認できます。
バージョンアップ
なおANCEL BM700はソフトウェアアップデートが必要です。初期のソフトウェアのままではF30のオイルリセットが失敗するケースがあります。ソフトウェアアップデートを行うには、公式サイトへアクセスしメニューから「Download」を選択します。
ユーザー登録が必要ですので、メールアドレスとパスワードで登録を行います。
Select Modelの項目で「HANDHELD SCANNER>BM700」を選択すると、最新のソフトウェアが表示されます。2021年1月20日とかなり最近アップデートが行われていることがわかります。
どれでも良いのですが、V2.04_EN_DEをダウンロードします。
アップデートファイルはrar形式で圧縮されているので展開します。
BM700を付属のMicro USBケーブルでパソコンと接続し、ダウンロードしたアップデートファイル内のUpdate.exeを実行します。Updateボタンを押下すると3分ほどでアップデートが完了します。
必要な道具と消耗品
ジャッキアップする場合
フロアジャッキ:コンパクトで使いやすい
ジャッキスタンド:大きな車でもなければこれで十分
輪留め:フロントをジャッキアップするならリアタイヤに輪留めをすると安心
カースロープを使用する場合
カースロープ:収納スペースが必要だけど、あるととっても便利
消耗品類
ドレンワッシャー:内径12mmのドレンワッシャーならOK。純正品は外径16mm。
エンジンオイル(カストロール・エッジ):安くて長年愛用していました。
エンジンオイル(モービル1):カストロールに飽きたので乗り換え。
オイルパック:オイル廃棄用。ホームセンターで買うとすごく安い。
ウェス:オイルが余計なところについちゃったら拭く用。キッチンペーパーでいいけどウェスの方が破れにくくてガシガシ使える。
パーツクリーナー:オイル汚れを落とすやつ。車の整備をするなら必須品。
工具類
レンチ:レンチ・エクステンション・17mmソケットも全て入ってる。
スキャナー(Carly):Ancelは入手性が悪いので一般的に評価の良いCarly。