冬に入り気温が下がるこの時期は寒さに弱いレモンやみかんなどの柑橘類にとって困難な季節です。そんな冬に気を付けなければいけないポイントが「葉を落とさないこと」です。
柑橘類の果樹全般において冬に葉が落ちる原因と対策を解説します。
葉が落ちる原因と影響 – なぜ冬に葉が落ちてはいけないのか?
柑橘類の果樹は常緑の果樹で1年を通して葉が落ちることはありません。そんな柑橘類の果樹の葉が冬に落ちてしまうと翌年の収穫量が減ったり、最悪の場合枯れてしまう可能性があります。
柑橘類の果樹は寒さにより木が弱ると、葉を落とすことで自身を生きながらえさせるために栄養分や水分の消耗を減らそうとします。つまり冬の寒さで葉が落ちているということは 枯れる一歩手前のサイン であるということです。
寒さにより柑橘類の果樹が枯れる過程を簡単に示すと以下のようになります。
- 葉が黄色くなり落ち始める
- 細く弱い枝から枯れ始める(表面上の変化はほとんどない)
- 葉がすべて、あるいはほとんど落ちる
- 徐々に枝の先端から枯れていく
冬に葉が落ちる場合は1番~2番あたりの場合が多いです。少々であれば問題ありませんが半分近く葉が落ちてしまっている場合には早急な対策が必要です。また冬の終わりの2月ころであればあとは暖かくなるだけですが、それより前の12月~1月ころに葉が落ち始めた場合、更なる寒さにより急速に木が弱ってしまう可能性があります。
柑橘類の寒さ対策
柑橘類の寒さ対策には大きく分けて枝葉を守るための地上部の対策と土の下の根を守るための土中の対策の2つがあります。影響が大きいのは地上部で土中の対策が必要になるのは特に寒冷な地域のみです。地上部の対策は一般的に-3度を下回る場合に必要になるとされますが、強い風に晒されたり株自体の寒さへの備えができているとも限らないため、天気予報の最低気温が0度近辺になった時点で対策を施しておくと安心です。
枝葉を守る地上部の対策
地上部の対策は非常に簡単で「寒冷紗」を使用します。
価格は数百円で非常に安価ですから、木を大切に育てたい場合には早めの対策が有効です。寒冷紗は日光を通し通気性のある白く薄い不織布で、ホームセンターなどで販売されている園芸用の透光性や通気性のある不織布で問題ありません。
これを枝葉を覆い隠すようにぐるぐる巻きにします。
あまり何重にも重ねると光や風を遮りすぎてしまうので重なりすぎないように注意して木全体をカバーします。寒冷紗の端っこは幹に縛るなどして風を受けても剥がれていかないよう固定します。葉と寒冷紗がこすれたり圧迫して葉が落ちてしまうのでは?と心配になるかもしれませんが、柑橘類の果樹の葉は多少のストレスがかかっても落ちることはありません。落ちる葉があるとすれば既に弱っていた葉の可能性があります。
非常に簡素な対策ですがこれが有効で、よほど寒冷な地域でもなければ地上部の対策はこれで完了です。
鉢植えの場合
鉢植えで育てている場合には室内に入れてしまうのが一番有効な対策です。
もし室内に入れることができない場合には、同様に寒冷紗で対策したうえで出来るだけ日当たりが良く風が当たりづらい場所へ移動します。吹きっさらしの開けた場所にはおかない方が良いでしょう。
既に葉が落ち始めている場合
寒冷紗を巻く時点で既に葉が落ち始めている場合、寒冷紗を巻くことで弱っている葉がぼろぼろと落ちてしまう場合があります。
寒冷紗を巻いた程度で落ちてしまう葉はもう手遅れだった可能性も高いですが、少しでも葉を残したい場合には支柱や杭を木の周りに立てて、支柱に寒冷紗を巻くことで木を寒さや冷たい風から守ります。苦肉の策ではありますがやらないよりはやった方が木を守ることができます。
こうした対策では木の周辺の気温自体を上げることよりも、低温化で木が風を受けて木の内部温度が下がることを予防するのが重要です。低温自体に対策しようとすると暖房付きの温室が必要になってしまい現実的ではありません。
根を守る土中の対策
寒さの影響を一番に受けるのは地上部の枝はですが、寒さが強まり土中の温度まで低下し始めると根から枯れてしまう可能性があります。多くの場合、まずは枝葉が弱り始めて土中深くの根まで影響がでないことが多いです。
しかし、念には念を入れて土中の根まで守ろうとした場合には「マルチング」が有効です。
マルチングとは株本の地面にワラやウッドチップ、堆肥類などを敷き詰めることです。オシャレなウッドチップや昔ながらのワラ、安価で土壌改良効果もある堆肥など選択肢は様々ですが保温性に優れるのはワラとされています。
堆肥を使用する場合には腐葉土やバーク堆肥が適しています。牛糞や鶏糞の堆肥は臭いが出たり虫が寄ってくることがあるほか、栄養分が豊富でマルチングには適していません。
葉が落ちてしまった場合の対策
既に葉が落ちてしまった場合には上記のような対策でなんとか冬を乗り越えましょう。葉が数枚でも残っていれば木自体は生きている可能性が高いです。少し暖かくなり柑橘類も成長の兆しを見せ始める2月末~3月ごろに以下のような対策を行います。
まず始めに幹から遠い枝の先っぽを剪定ばさみで切断します。
生きている柑橘類の枝の切断面は薄っすらと緑色の入った白色をしています。これが枯れていると茶色がかった白に変色しています。もし枝を切断して茶色っぽい場合は枯れているので更に手前で切断します。これを繰り返して緑色の入った生きている部分まで切断してください。これをすべての枝で行い枯れている部分を除去します。また、この時に長い枝や突き出した枝があれば生きていても短めに切り詰め、全体的に木の大きさをコンパクトにします。
冬で弱った木は春を迎えて暖かくなっても、大きな木全体に養分を行き渡らせる力がありません。木を全体的にコンパクトにすることで養分をしっかり行き渡らせ、また春からの成長を促してやります。