「テトルドX」は、オルルド釣具の販売する穴釣りロッドの1つだ。近年「穴釣り」と呼ばれるジャンルの釣りが注目を集めている。「穴釣り」自体は昔から存在した釣り方のひとつだが、その手軽さや釣果の出やすさなどから近年影響力を増している釣りYouTuberの間でもよくフォーカスされる釣りになっている。
これに乗じて釣り具メーカーも専用タックルや工夫を凝らしたブラクリ仕掛けを開発・発売している。
実釣レビュー:オルルド釣具・テトルドX
オルルド釣具を片手に向かったのはサーフから突き出た突堤のひとつ。この突堤の周辺には大きめのテトラポッドが配置されている。穴釣りに向いたポイントといえば、水深の深い漁港などにある小さめのテトラポッドだ。
もし近隣にそうしたポイントがあるのであれば、間違いなくそちらへ行った方が良い。なぜならば、大きめのテトラポッドだと肝心の「穴」が大きすぎて魚が居着かない。また、水深がないと潮の満ち引きの影響が大きすぎたり水温の変化が大きすぎて根魚がやはり居着かなくなってしまう。
今回なぜ大きなテトラポッド+水深が浅いという穴釣りに不向きなポイントを選んだかと言えば単純に近所に適当な場所がなかったからに過ぎない。
ただ、穴釣りの魅力はなんといってもポイントを選ばず釣れるという点である。とりあえずテトラポッドでも岩でもなんでも良いから「穴」さえあれば大抵釣れる。エサには塩サバを使う。スーパーで安価に販売されている塩サバを細く切って塩漬けにしておくと安価で便利だが、釣具店で餌としても販売されている。
塩サバを使うことでターゲットを根魚に絞り込むことが出来る上、餌持ちが非常に良い点も嬉しい。
アオイソメも良いがフグやベラなど余計な魚が食いついてきてしまうのが難点だ。さて、使いだしてすぐに気が付くのはその短さだ。全長50cm。グリップを除けばたった30cmしかない。本当に手元・足元に仕掛けを落とすイメージである。通常のロッドでは自分の立っている場所の一歩先か二歩先あたりに仕掛けを落とすことになるが、「テトルドX」では本当に足元に仕掛けを落とす。
だから、穴のある場所までテトラポッドの上を移動する必要がある。
足元に良い穴があるのであれば一向に構わないが、逆にすぐ目の前の穴に落としたいという時はいちいち移動が必要だ。とはいえ、そこは決して大きな問題ではない。肝心のロッドの性能を確かめてみたい。「テトルドX」はメーカーが40cmクラスのクロダイを抜き上げられると公言するほど頑丈に作られている。
頑丈なのは良いが、問題は敏感にアタリを取りながら食い込みの良さを実現できているかどうかだ。このロッド、はっきり言って硬い。40cmクラスのクロダイを抜き上げられるというだけあって硬い。しかし、グラスのソリッドティップを採用するだけあって張りは確かに弱い。
果たしてこれがどう効くか?
ところで今回使用している仕掛けはブラクリ4号なのだが、これが全く乗らない。アタリはあるのに乗らない。竿先は敏感に反応してくれているものの、どうにも魚が完全に小さいらしい。しばらく粘ってなんとかフッキングさせた一匹を見るととにかく小さかった。
その後しばらく釣行を重ねてみたが、やはり時期によるものか小型ばかりで、さっぱり良型の根魚には出会えなかった。とはいえロッドの性能を測るにあたって小型魚は悪い相手ではない。頑強さはメーカーが謳うほどであるから良いとして、小さな魚を弾くことなく釣ることができるかどうかが重要だ。
結果的には完ぺきとは言えなかった。
とはいえ10cmのないような赤ちゃんカサゴであっても何度も釣り上げることが出来たし、引きを存分に楽しむことが出来たから食い込みは決して悪くない。カーボンロッドにあるような張りがないからピン、ピンとアタリを弾かずに済む。
ただ、もう少し柔らかくしても良いのではないかなぁと正直感じた。20cmオーバーの根魚をコンスタントに釣ることが出来る場所であれば、この硬さも妥当かもしれない。しかし、穴釣りでは20cmを越えれば良型と言って良いだろう。
そうであれば、もう少し柔らかくしてターゲットサイズを下げることで、更に食い込みを良くして小型魚の引きも楽しむことが出来るようにできるはずだ。
最後に、持ち運びに関して言えば完璧と言える。振出よりロッドを軽量かつ高性能にしやすい2本継ぎ仕様で、2つに分割すれば長さは約30cmだ。リュックサックに収まる。あとはブラクリと餌をリュックに積めば徒歩でも自転車でもバイクでも、手軽に釣りに行くことができる。
「オルルド釣具・テトルドX」のメリット
1.足元に仕掛けを投入できる
通常の短めのロッド(1.5~2メートルほど)で仕掛けを足元に投入しようとするとかなり難しい。
現実的には、仕掛けを投入する場所から一歩離れてロッドを寝かせたりして仕掛けを投入することになるだろう。しかし、「テトルドX」はその極端なほどの短さのお陰で本当に足元に仕掛けを投入することができる。
これはこのロッドの最大の特徴であり、そして最大の魅力といえるだろう。
2.食い込みが良い
グラスのソリッドティップを採用するだけあって張りが少なく食い込みが良い。
ただ、もう少しロッド自体を柔らかくして更に食い込みを良くすることもできたように思う。
特に10~20cm程度の小型の根魚をメインターゲットと考えるのであれば、ここまでの硬さは必要なかったはずだ。
3.頑丈
良く曲がり、適度な硬さがあり、ガイドやその取り付けも確かな強度を確保している。
2本継ぎ仕様でグリップを除けばチャチな部分はない。
正直言って穴釣りには過剰なほど頑丈に作られているように思う。
4.コンパクト
2つに分割すれば全長約30cm、分割せずとも50cmという小ささはなんといっても魅力的だ。
それこそクーラーボックスに収まるサイズ感である。
分割しないままリュックサックに突っ込んでも、穂先がリュックサックからちょっと飛び出す程度だ。
自転車やバイクに乗って、釣り場をランガンしながら穴釣りするというのも楽しいかもしれない。
「オルルド釣具・テトルドX」のデメリット
1.移動が頻繁に発生する
「テトルドX」の特徴はなんといってもその短さだ。
最初手にしたときは「これは良い」と素直に関心したが、実際に釣りに行くと短さゆえの不便さも感じられた。
例えば、テトラポッドの上に立つと周囲2メートル程度の範囲内に複数の穴が見つかるはずだ。
こうした穴に仕掛けを投入する時、通常の短めのロッド(1.5~2メートルほど)であれば竿を穴に向けてぐいっと突き出したり、竿を立てたり寝かせたりすればそれなりの範囲の穴に移動せずとも仕掛けを投入することができる。
しかし、「テトルドX」は短すぎてこれが出来ない。
本当に足元にしか仕掛けを投入できないから、1穴1穴釣るたびに移動しなければならない。
これが意外と面倒くさく、手返しも悪くなる原因になる。
また、テトラポッドの形状ゆえに穴にギリギリまで近寄ることができないケースがある。こうした場所では仕掛けをそもそも穴に投入することができない。
現在、穴釣りロッドといえば極端に短いものが主流だが、もしかすると今後の主流はもう少し長い全長80~120cm程度になっていくのではないかと勝手に推測してみる。
2.スピニングリールは適さない
「テトルドX」はスピニングリール・ベイトリール(両軸リール)の全てに対応している。
ただし、スピニングリールを取り付けるとベールから出るラインと一番根本のバットガイドにかなり角度が付く。
このため巻き取りの際にはガクガクとぎこちない巻き上げになってしまう。
これを回避するには小型のベイトリールや両軸リールを使うと良いだろう。
ただし、ガクガクとなったところで釣り自体に支障は出ないので気持ちの問題である。
3.見た目が安っぽい
ロッドの本体は良いのだが、グリップはとにかくチャチだ。
素材のせいもあるかもしれないが、素材以上にカラーリングがチャチさを増大させている。
メタリックな赤に安っぽいゴールドがなんとも言えないおもちゃ感を出している。
シンプルに一色に統一するとか、無塗装の黒にするとかもう少し良い選択肢が合ったように思う。
4.穂先が回転する
このロッドは2本継ぎ仕様で、グリップにロッドの根元を差し込むような構造になっている。
ロッドの根元は金属でカバーされており、これをグリップ側の穴に圧入するのだが結局は摩擦でロッドを保持しているだけなので、釣りをしている最中にいつの間にか回転している。
別に回転したところでガイドがちょっと横を向いている、とかその程度のものだから大した問題ではないものの、もう少し摩擦を抑える工夫をすることができたと思う。
もし分割の必要がないのであれば接着剤などで固定するのも良い案だと思う。
総括
テトルドXはオルルド釣具の在り方を体現したようなコストとパフォーマンスのバランスが優れた穴釣りロッドだ。
極端に短いその全長から、使い方が限られるという難点はあるが、それ以外に目立った問題点はない。
デザインの問題でややチープに見えるものの、ロッド自体の作りは非常にしっかりとしており値段以上の出来栄えといえる。
手軽にシーズンを選ばずに遊べる穴釣りに少し熱意を傾けてみようと考えている釣り人であれば是非一度手に取ってほしい出来の一本だ。