ワイヤレスルーターやスマートホーム製品で有名なTP-Link社から販売される屋外用防犯カメラのスタンダードモデルである「C310」を購入しました。
TP-Link社のラインナップには屋内専用のTapo C210や本格的な機能や外観を備えたVIGI C300HPなどがあります。Amazonでも楽天市場でも価格差がないので楽天会員の方はTP-Linkダイレクト 楽天市場店で購入すればポイントも溜まって一石二鳥です。
性能や使い勝手、外観、設定手順といった評価はすでにやり尽くされているので、ここでは設置作業において最も厄介な電源ケーブルの配線やその防水処理について解説します。
屋外用機器の防水の考え方
屋外用に設計された照明器具や防犯カメラのような機器は、基本的に本体に隙間がなく水が侵入しません。そうは言っても複数の部品で構成された製品ですから、部品同士の接合部にはゴム製のパッキンが使われていたりある程度水の進入を許容しつつ排水する構造が採用されます。
しかし、こうした隙間や経路は新品時こそ適切に機能しますが、使用期間が長くなるとゴムのパッキンが劣化してやせ細ったり、ひび割れたり、排水経路がゴミなどで目詰まりしてうまく排水できなくなったりします。多くの場合、屋外用の電子機器が故障する原因はこうした防水機能が正常に機能しなくなることにあります。
例えば「防水」や「防雨」と謳う製品であっても本当に雨ざらしの場所に設置すると寿命が縮みます。多くの電化製品が素材として「樹脂」を採用しており紫外線による劣化も見逃せません。(正確には「防水」と「防雨」は別物ですがここでは省略します)
もしご自宅に屋外用の照明器具や機器がある場合には確認していただくとわかるのですが、極力「軒下」に設置されているはずです。軒下とは、下図の通り軒の下の空間を指します。軒のない建物は外壁の劣化が早いとされていますが、電子機器もやはり日当たりが良く雨ざらしでは寿命が縮みます。
また、防犯カメラの場合には水滴がレンズカバーに付着して映像が乱れる可能性があります。高価な防犯カメラではレンズカバーを覆う庇(フード)がありますが、極めて安価なTP-Link Tapo C310には備わっていません。基本的に軒下で使うものであるということが見て取れます。なお、我が家の環境では軒下と言っても風雨が激しいときには直接雨水がかかってしまいますが特にメンテナンスせずとも綺麗に映像を届け続けてくれています。
さらに電源ケーブルも本体側との接続こそ防水パッキンが採用されていますが、ロック機構もないため常に水に触れる場所で使うには信頼性に乏しいです。こちらもできれば軒下で使うか雨ざらしなら別の対策が必要になるでしょう。電源プラグ側は全く防水処理がされておらず、アダプターも大型でかさばります。この製品の唯一にして最大の問題と言っても良いでしょう。いずれも本記事内でも説明しますが屋外用のボックスに格納するように設置すると良いでしょう。
今回はこの電源ケーブル周りの防水と屋外における配線をDIY向けに基礎に則って解説します。
電源アダプターの防水処理
まず始めに電源アダプターの防水処理が必要です。
世の中には防水タイプのプラグもありますが、やはり長期間屋外で使うためのものではありません。電源の接続を屋外で行う場合には専用のボックスを使用します。実際の製品としては未来工業の「PVKボックス」や「ウオルボックス」などの防雨性のあるスイッチボックスを使用します。
多くのホームセンターやAmazonを始めとした通販サイトでも安価に手に入ります。通販であれば、ホームセンターでは見かけないカラーバリエーションも選択できるのが魅力です。PVKボックスは色々なサイズバリエーションがあるのですが今回の防犯カメラ設置では「大型四角(深型)」というバリエーションが適切です。もう少し小さくても収まるのですが電源アダプターや配線はギチギチに詰めるべきではないため大きめを選択しましょう。
ベージュがかった白がスタンダードカラーで通常のホームセンターではほとんどベージュしか扱っていません。
こうしたボックスは雨ざらしにできない配線などを収納するために作られています。今回の用途にピッタリですね。この手のボックスは、上の写真を見てわかるように様々なパーツを組み合わせて色々な状況に対応することができます。
具体的には以下のようなコネクタがあるとPVKボックスなどに配線を保護するパイプ(PF管)をワンタッチで確実に取り付け可能です。(1個50円前後)水を浴びるようなところでは防水タイプのコネクタもあります。
PF管は屋外の電線配管に使用される専用品です。ホームセンターでは1m単位の切り売りがされていて、安価です。(1mあたり100~150円前後)同じような用途で蛇腹ではないVE管もあって、そちらの方が仕上がりは綺麗ですが、垂直や直角が綺麗に出ていないと汚らしくなる点や、柔軟性がなく扱いにくいためよほどこだわりがなければDIYではPF管を使った方が良いと思います。
PF管はこのようなサドルで壁に固定します。
この組み合わせ、お家のまわりをぐるりと回ると一カ所くらい見つけることができるのでないでしょうか?屋外で電源配線を引き回す時に使われる定番商品たちです。プロも使う道具ですが、価格はすべて非常に安価です。
今回は実際にこうした部材を使用して電源ケーブルの防水処理を進めていきます。
スイッチボックスの設置
まずはスイッチボックスをお好みの場所に設置します。繰り返しになりますが、できれば軒下など屋根がある場所が望ましいです。
スイッチボックスに配線を接続する場合には事前に接続の準備を済ませましょう。先ほど紹介したPVKボックスを使う場合、既に配線を通すための穴の切り込みが用意されています。
マイナスドライバーなどを隙間に差し込んでこじってやると、穴が貫通します。貫通させなければ完全に塞がれた状態で水やホコリの影響も受けません。必要な場所だけ穴を貫通させましょう。
コネクタを使ってPF管を接続するとこんな感じです。専用のコネクタなのでワンタッチで確実に取り付け可能です。
このボックスを壁面などに設置する方法は大きく分けて両面テープかビス止めの2通りです。
両面テープの場合
今回収納するのは余分な配線と電源アダプターのみです。
ほとんど重量がないため、強力な屋外用両面テープを使用すれば問題ありません。家の外壁は細かな凹凸があり、風雨や紫外線の影響もあるため必ず屋外用の厚手の両面テープを選択してください。
「建築用」や「自動車外装用」の厚手と明記された両面テープなら安心です。貼り付けの際には必ず貼り付ける面を綺麗に水拭きしてから水分が乾燥するのを待ってください。
ビス止めの場合
この手のボックスはプロ向けの部材です。
そのためどのような状況にも対応できるようにネジ止めするための下穴は開いていません。目安となるくぼみはついていますが、基本的に自分で望ましい場所に下穴を開けて取り付けます。ネジ止めする場合には外壁や軒天に固定しますが、ここでいくつかの判断が求められます。
まず始めに一般的な軒天は「ケイカル板」と呼ばれる石膏ボードみたいなものをペンキで塗装しています。このケイカル板はほとんどビスが効かないため、ビス止めする場合には下地となる木の角材を探す必要があります。
また、薄くて割れやすいためしっかりと固定するには少し難易度が高いです。
外壁は窯業系サイディングか金属(ガルバリウム鋼板など)の2つが一般的です。いずれも外壁越しに下地の木の角材に固定します。今回のような軽量物の場合、窯業系サイディング自体に固定することも可能です。その場合にはプラグを使うか、プラグが不要なネジを使います。一般的には「プラグ不要のコンクリートビス」としてホームセンターのネジ売り場で見つけることができます。
ちなみにC310にはプラグとネジが付いているので、こちらを使っても構いません。
とはいえ、家の外壁のなかには下地の木材だけでなく配線があることもあるため注意が必要です。また、ネジの取り付け部から水が壁内に進入するケースも想定して適切にコーキングなどを施す必要があります。ボックスと外壁の間にも、外壁の凹凸を吸収するためにエプトシーラーなどの防水パッキンを敷設するとなお良いです。
こちらは我が家の外壁にスイッチボックスを取り付け、マスキングしてコーキングをしている様子です。(必ず変性シリコンなど塗装の乗るものを使う)
ここまでの説明でわかるように、外壁等にビス止めする方法はDIYに不慣れな方にはちょっとだけ厄介です。もし周りに既に外壁に取り付けられた金具やビス類がある場合には、共締めするのも良いでしょう。
C310は非常に軽量ですから両面テープだけで固定する方が安心です。
PF菅やサドルを使った仕事はプロのような仕上がりで満足感は高いですが、設置には両面テープを使い、配線には屋外用配線モールを使う方法が1番難易度は低いです。
電源ケーブルの配線
電源ケーブルの配線にはPF管を使用します。
通常の屋外用配線モールと呼ばれる両面テープで壁面に接着するモールタイプや、柔軟性のないパイプ(VE管)などいくつかの選択肢があるのですがPF管が使い勝手が良いです。また、将来的なメンテナンス性や作業性も良いため特段のこだわりがなければ柔軟性があり対候性に優れ、価格も安価なPF管がおすすめです。
使い方は管内に配線を通して壁などを這わせるだけ、なのですがひとつだけポイントがあります。PF管や配線モールの出口は必ず下向きにするということです。
これはどのような場所においても必ず守りましょう。
場所によっては横向きや上向きにした方が配管の取り回しがシンプルになることも多いと思いますが、絶対に水が侵入しない屋内でもない限りは面倒でも下向き厳守です。基本的にこうして配管を切りっぱなしにするべきではないのですが、やむ負えない場合は下向きに取り付け防水テープで隙間を塞ぐと良いでしょう。
PF管の取り回しにはサドルを使用しますが、ネジ止めが嫌な場合には屋外用配線モールを使用しましょう。屋内用と屋外用の差は対候性の有無です。また、屋外用の場合は凹凸のある外壁などに使用するため両面テープなしで販売されていることも多いです。
使用する接着面にあった両面テープを貼付して使用します。外壁など凹凸面がある場合には、先ほど紹介した建築用の厚手両面テープなどを使うと良いでしょう。
【余談】Tapo C310とC65の違いはとは?
ちなみに今回の購入の際に、もう一台Tapo C65というモデルを購入しています。
このモデル、大抵の場合C310よりやや低価格で販売されており、公式のオンラインショップでもアウトレットに並んでいたりします。
この2台を同時に購入する方も早々居られないと思うので違いを説明するとパッケージの差です。
本当にこれだけです。C65はグローバル版で、パッケージは英語表記、付属の説明書も全世界の各国語対応版です。一方でC310では日本語化されています。どちらも公式のオンラインショップで買えば同等のサポートが得られますし、性能も付属品も細部に渡るまでモノ自体は同じです。
専用アプリ「Tapo」では2つのモデルがそれぞれ選べます。
おそらく今後の売れ行きが落ちない限りは日本国内では日本語版であるC310の流通が増えていくはずです。同じ性能で処分セール状態のC65は防犯カメラを安く買うチャンスかもしれません。
その他あれこれ
1.128GBより大容量のMicro SDカードは使える?
防犯カメラとして使う場合、長期間の録画データが残っていた方が安心です。
製品ページでは128GBまでのMicro SDカードに対応しているとの表記がありましたが、試しに512GBのMicro SDカードを挿入してみました。
ご覧の通り、全く問題なく使用できました。フォーマットもできます。
2.LANケーブルが不要な場合は切っても良い?
C310本体からは電源ケーブルとLANケーブルが伸びていて、無線LAN接続する場合には有線LANコネクタが邪魔です。私の場合は切断してテープでぐるぐると巻いて処置しておきました。問題なしです。
3.ループ録画可能?
Micro SDカードに記録可能となっていましたが、記録方式が不明でした。
結果としては、ドライブレコーダーのようなループ録画が可能でした。データ容量がいっぱいになると古いデータから順に削除されていきます。ループ録画をオフにした場合には、データ容量がいっぱいになると録画が停止されます。
4.Tapoアプリの使い勝手は?
この手の製品とセットになって提供されるアプリは使い勝手が悪いことが多いです。
しかし、Tapoアプリはかなりよく出来ています。動作も軽快。UIもしっかりとしていて、なんの説明なしでも迷うことなくすべての機能を使いこなすことができます。Eufy製のカメラも使用していますが専用アプリである「eufy Security」は使い勝手が非常に悪いうえにレスポンスも悪く、Tapoアプリの出来の良さが際立ちます。
5.設定は難しい?
設定は簡単です。
しかし、読むのが嫌になるような国内メーカーの取扱説明書とは違って、C310の取扱説明書は非常に簡素です。ITリテラシーがある程度ある人にとっては何の迷いもなく一瞬で設定は終わりますが、そうでない人にとっては少し頭を悩ませるかもしれません。とはいえユーザーが多い製品ですから、わからなければネットで検索すれば丁寧な解説が見付かります。
6.映像は綺麗?
映像はとってもきれいで夜でもよく映ります。
防犯カメラという特性上広角レンズで画素数もデフォルトではフルHD、設定で2Kと720pが選択可能です。そのため、映像のなかの一点をズームしてよく見たいなんて言う時には不足を感じます。これは別にこの製品が悪い訳ではなく、使い方が悪いだけなので問題ないのですが、庭の巣箱にくる小鳥の種類を特定しようとするのは流石に無謀でした。
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