園芸店で見たことがない魅力的な植物を手に取ってみると、南国出身の寒さに弱い植物であることが多いものです。日本の気候に適した植物はどこへ行っても同じような品種が並ぶため、ふと目に留まったものは多くの場合、日本の気候に適さない「弱点」を持っているものです。
「弱点」は大きく分けて2つあります。
- 耐暑性が低い、あるいは乾燥を好むため高温多湿な夏に耐えられない
- 耐寒性が低いため冬を越すことができない
いずれの植物もプランター栽培をすることによって、寒い冬や暑い夏に室内に取り込むことで対策することができますが、庭造りの一環として据え置きたい場合や、地植えしたい場合に必要な対策を紹介します。
0.枯れるプロセスを知る
対策を始める前に、そもそもなぜ寒さで植物が枯れていくのかを知る必要があります。これを知ることで、例えばビニールハウスがあまり意味がない理由を知ることができます。
草木を問わず多くの植物は土中に根を張り、茎をのばして葉をつけます。葉は表面積が広く風の影響を受けやすく、冬の寒さでは容易に葉の持つ水分が凍結したり、表面に霜が降りて葉のなかの水分を抜き取ってしまいます。外気の影響は薄く細い部位、つまり葉から細い枝先を害しやすく、太い茎や幹は比較的寒さに耐えやすいです。また土中に張る根は地上部の枝はに比べると寒さの影響を受けにくいものの、それでも根のなかの水分が凍結した場合には水の通り道の細胞を破壊して末端から壊死する形で植物を枯らしてしまいます。
それではなぜ耐寒性が植物の品種によって異なるかと言えば、凍結への耐性や凍結に強い生育方法にあります。ここでは詳しく言及しませんが、耐寒性に強い植物は例えば根は浅く広く張るより、寒さの影響を受けづらいように深く根を張ります。葉も表面積を小さくしたり、冬は落葉して休眠することで寒さを乗り越えます。また植物内の水分の組成にも違いがあり、耐寒性の強い植物の持つ水には糖などの不純物が含まれ凍結温度が0度より低くなります。
寒さで植物が枯れるプロセスは一貫して植物内の水分が凍結することにより引き起こされます。凍結する条件はもちろん0度を下回ることにありますが、氷点下を下回ってもバケツの水が表面しか凍らないように、物の内部まで完全に凍結させるにはそれ相応の条件が整う必要があります。
寒さ対策1 – 風を防ぐ
関東以南の比較的温暖な気候条件下では、夜間に一時的に氷点下を下回るものの、日の出以降は気温が上がり5度から10度程度まで気温が上昇します。
こうした暖かい地域では氷点下を下回るのはごく短時間であり、植物自身が蓄えた熱や周辺の建物等が蓄えた熱の影響もあって凍結のリスクは比較的低いと言えます。ただし、これは無風条件下に限る話です。蓄えられた熱も風が吹けばどんどんと冷えた待機と交換されていき、凍結してしまいます。そのため寒冷紗を巻きつけ風を防いだり、ビニールハウスのように囲いをつけることで、熱が奪われるのを防ぐ対策が有効です。
ビニールハウスの場合は、夜間は外気温とビニールハウス内の温度は同一になりますが、日中日射があれば外気温以上のハウス内温度を得られます。これにより日中であれば冬は育ちの悪い多くの植物であっても生育を促すことができるのです。一方で適切な換気をしないと蒸れたり温度が上がりすぎる点に注意が必要です。ビニールハウスはあくまでも冬場でも生育を良くするためのものであり、寒さ対策はオマケ程度です。
寒さ対策2 – 水を切る
寒さにより植物が枯れるプロセスで説明したように、寒さで枯れる原因は一貫して植物中の水分が凍結することにあります。つまり、逆に言えば植物中の水分をできるだけ減らすことで凍結による被害を更に防ぐことができます。
落葉樹はこの対策を自身で行う典型的な植物であり、冬場は葉を落として休眠することで、植物内の水分を極力少なくします。一方で寒さに弱い植物は冬に休眠する特性を持たないため、水があればあるだけ吸い上げて水分をたっぷりと蓄えてしまいます。
対策は非常にシンプルであり、冬場は水やりを極力避けることです。
特に地植えであればよほど乾燥した晴天が続かない限りは土中の水分が不足して枯れることはありません。寒さの厳しい期間は水をやらず、また雨が降った場合も土をあまり湿らさないように対策します。ただし、株本をビニールマルチや防草シートで覆った場合は土中の水分の蒸発も防いでしまうため、基本的には水やりをしないだけで十分です。
寒さ対策3 – 土中の温度低下を防ぐ
園芸店で管理される南国育ちの寒さに弱い植物たちは、多くの場合、寒さの厳しくなる前に強めの剪定を受けて枝葉がない状態にされます。植物は根さえ生きていればまた気温が上がった春に再び芽をだします。ただし、末端の枝葉を枯れたままにしておくと痛んで病気の原因になったり、腐敗が進んで根まで影響を及ぼすことがあります。
どうしても寒さに弱い植物を地植えする場合は、地上部は諦め根だけでも越冬させることを検討する必要があります。そのためには株本にたっぷりの腐葉土や敷き藁を敷き詰めたる対策が有効です。
見た目を優先する場合には、腐葉土などをたっぷりと敷き詰めた上に市販のマルチング資材を敷き詰めることもできます。ただし、この時にビニールマルチや防草シートを使うことはおすすめできません。
なぜならビニールマルチや防草シートなどの透湿性の低いシートを株本に敷き詰めてしまうと土中の水分が株本に溜まり、凍結による根の被害を引き起こしてしまうことがあるためです。防草シートは透湿性があり水も通しますが、実際に敷き詰めてみるとわかるようにその透湿性は決して高くなく、防草シートの下はジメジメとした状態が続くものです。
プランター栽培においてはプランターをプチプチなどの断熱材で巻く対策が有効なのも根を守るためと言えます。
寒さ対策4 – 壁際や軒下に近い場所に植え付ける
庭造りをする上で寒さに弱い植物を取り入れる場合には、事前にその配置をできるだけ構造物や屋根のある部分に近づけると寒さの影響を防ぎやすくなります。特に南向きであれば地面や植物だけでなく隣接する建物も熱を蓄え、夜間冷え込み出すとその蓄えた熱をジワジワと放出するため、外気温の影響を受けづらくなります。
また軒下など屋根がある場所では放射冷却により上空へ向かう熱を少しだけ防ぐ効果が期待できるため、壁際・軒下というのは屋外においても比較的冷えにくい場所になります。
まとめ
地植えで冬を越す対策には限度があり、残念ながらとれる対策は大まかに以下の3つだけです。
- 風を防ぐ
- 水を切る
- 株本を保温する
途中でも触れたように、どうしても冬を越せない植物は強めに剪定して枝葉を落とし、根だけでも保温することで越冬して春に再度芽吹くのに期待することになります。また株自体が小さいと寒さの影響を受けやすいため、寒さに弱い植物を買う場合には大きくなるまではプランター栽培し、ある程度しっかりと育ってから地植えするか、最初から大株を買う方法が有効です。
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