BMWの各モデルに搭載されるECOモードあるいはECO PROモードを有効にすると一体どんなメリットがあるのでしょうか?実はこのECO PROモードを使っても効果が薄いシチュエーションが多く、むしろ車の負担を増大させ最終的に排出ガスを増やす結果になる場合もあります。
今回はこのECO PROモードが一体どんな制御を行い、どんなメリットがあるのか紹介すると同時に、どんなデメリットが考えられるのか?を解説していきます。
1.アイドリングストップの再有効化
アイドリングストップはその再始動時の振動や音を理由に意図的に無効にするBMWオーナーも多いです。ECO PROモードを有効にすると、無効にしていたアイドリングストップが再度有効化されます。もちろん、再度無効化することも可能です。
アイドリングストップはその有効性が疑われることも多いです。バッテリーを始めとしてセルモーターやエンジンの消耗を早めるデメリットもあります。アイドリングストップが有効になることで停車時の排出ガスをなくすことができ、その副産物として条件によっては燃料を節約することができます。しかし中期的にはバッテリー、そして長期的にはセルモーターやエンジンの各部を傷めることにつながります。1つの部品を作り出すための環境負荷はアイドリングストップ程度では取り返すことができません。
それ以上に問題なのは、現実世界における都市部の交通は完全に停車したまま動かない状態は短く、じわじわとストップ&ゴーを繰り返すためアイドリングストップによる排出ガスの低減効果には疑問が持たれるところです。
2.エアコンの制御
エアコンは車に搭載された数ある電装品のなかでも特にエンジンへの負荷が高く燃費を悪化させる原因になります。
このエアコンの動作を抑え込むことでエンジンへの負荷を低減することで確実な燃費の向上を見込めます。BMWのECO PROモードにおけるエアコンの制御は常にエアコンの動作を弱めるわけではなく、エンジンの動作と設定温度など各種パラメータから判断して適宜エアコンを制御します。夏場の冷房の効きが弱く感じるなど体感できるデメリットも存在します。
これは純粋なコンピュータ制御であり、制御のための追加部品もなくほとんどデメリットのないオーナーに寄り添った良い燃費対策といえます。
3.セーリング
ここまでの2点は非常にわかりやすい項目ですが、この「セーリング」と次に紹介する「回生ブレーキと発電ロス低減」がECO PROモードの少しわかりにくくさせている要因です。
セーリングとは、アクセルペダルから足を離すとエンジンとトランスミッションを切り離します。これによりエンジンブレーキをなくし完全に惰性で走行します。通常であればアクセルペダルを離してもエンジンブレーキが効いて徐々に減速しますが、セーリングが有効になると減速スピードが緩やかになります。ただし、下り坂などではエンジンブレーキが効かないために速度がですぎてしまうことがあります。
セーリング中にブレーキを踏んでもセーリングは維持されますが、状況によってはセーリングが解除されてエンジンブレーキが効くようになることもあります。セーリング中は回生ブレーキによるバッテリー充電は有効にならず、セーリングが有効なら回生ブレーキは無効、逆もまた然りです。
セーリング自体は追加部品や特別な制御も不要で良い燃費対策ですが、坂道の多い道ではエンジンブレーキが効かずにブレーキを多用するためブレーキの消耗が早まったりバッテリーの回生が働かないというデメリットがあります。
4.回生ブレーキと発電ロス低減
ハイブリットや電動化されていないモデルにはシンプルな回生ブレーキが備わっています。
この回生ブレーキは、通常であれば熱に変換されるだけの車の運動エネルギーをバッテリーの充電に回します。充電された電力が何に使用されるかというと、ハイブリット以外のモデルでは直接的なエンジンの補助を行いません。回生ブレーキによりバッテリーが十分に充電されると、オルタネーター(発電機)を切り離してエンジンの負荷を低減させます。
理論としてはエアコンの制御に近いですが、エアコンに比べるとオルタネーターの負荷は小さく、また充電が不足すると最悪の場合エンジンが停止するなど影響が大きいためエアコンほど大胆に制御することはできません。
そのため効果は限定的であり、バッテリーが充電されたところでハイブリットカーのような明確な効果は見込めません。