地方移住を考えるフリーランスエンジニアに伝えたい4つのポイント

私は地方移住をして5年超、在宅勤務歴は10年超のそこそこベテラン在宅ワーカーのひとりです。仕事は主にIT関連、特にエンジニアとしての仕事が多く勤務の自由度が高いいわゆる下流工程(プログラミングなど)を好んで携わっています。

コロナ禍を経て、在宅勤務やフリーランスエンジニアを始めとした自由な働き方が広まり始め、結果的に地方移住を検討する方も増えていると聞きます。特に東京や首都圏から辺鄙な田舎への移住を検討している人に向けて先達として移住してみて気が付いたいくつかのポイントや必要なことを紹介します。

1.必要な設備が増える

在宅勤務では正社員やそれに準ずる働き方では会社からPCなどの機材が貸与されますが、フリーランスエンジニアともなれば原則として機材は自前で用意します。田舎の山奥ともなれば故障時の機材の調達や修理に時間がかかるだけでなく、故障や稼働停止のリスクも高まります。

私が住む高知の山奥はもとより多くの辺鄙な田舎では通販ひとつとっても配達に+1日程度の所要日数がかかります。翌日配送に対応する商品はあるもののこれは在庫が近隣地域の大型物流拠点にある場合に限ります。東京やその周辺では大抵のものは当日か翌日に受け取ることができますし、生鮮食品などにも対応していますが田舎ではそれが期待できません。また車で少し足を伸ばせばどこかしらの大型家電量販店があるものですが必要な機材が必ずしもそろうわけではありません。Apple Storeが近隣にないなんていうことも当たり前です。

そのためフリーランスエンジニアとしての働き方にもよりますが、少なくともコールドスタンバイ状態の予備のPCや必要機材が必要になります。

これに加えて山間に住む場合にはUPSも必要です。

地方都市ならいざ知らず、東京やその周辺の広大な関東平野で育った方には想像ができないかもしれませんが、山間部では当たり前のように落雷で瞬停が起こります。PCの電源も落ちないような一瞬の停電であることが多いですが、これは周辺にある送電設備の状況によるため引っ越し前に状況を把握するのは困難です。

停電して仕事ができない、落雷で機材が壊れたと言ってもフリーランスエンジニアは自己責任ですから、自衛のためにUPSが必要になります。ノートパソコンで済むのであれば問題ありませんが、それでもなおルーターなどのネットワーク機器はUPSで停電対策や保護が必要になります。

2.カフェで仕事をしてはいけない

ITやセキュリティのリテラシーが低かった時代には電車や飲食店で仕事用のパソコンを開く人を見かけることも珍しくなりませんでした。もちろんまともな企業であれば公共の場でパソコンを開きログインするなど以ての外であり処分の対象となるような行為です。

しかし、フリーランスエンジニアや働き方の自由度が高まるにつれて公共の場で仕事用のパソコンを開く人を見かける機会が増え始めました。私自身がフリーランスエンジニアとして仕事に携わり、新しい会社との仕事では都度契約を交わすわけですが、こうしたセキュリティに関する項目には言及されないことが多いです。フリーランスエンジニアに秘匿する必要のある情報を渡さない前提がありますが、開発環境へアクセスできる時点でセキュリティに気を配る必要があるのは自明です。これはフリーランス(多くの場合は業務委託契約など)では働く場所や時間を指定したり管理することができないために契約に盛り込むことができていないようです。企業としてはフリーランスエンジニア自身のリテラシーに頼るしかなく、半ばグレーな部分として扱われています。

フリーランスエンジニアという働き方を今後も継続させていくためにも、契約を交わしていないからといってセキュリティを損なうような働き方を止める必要があります。そのためにも移住の際には転居先に必ず書斎などの執務スペースを確保しておくことをおすすめします。

特に移住にあわせて在宅勤務を始めたり、フリーランスエンジニアとして独立する場合にはダイニングやリビングで仕事をしたり、専用の執務スペースを持たずに仕事をする方も多いです。これは作業効率を低下させるだけでなく、仕事と生活のメリハリもなくなりストレスに弱い方にとっては仕事へのモチベーション低下につながります。

とにかく良質な執務スペースを構築するために投資を怠らないことです。良いデスク、良い椅子、良い機材、そして集中できる空間を確保して部屋から一歩出れば息抜きになるような家づくりや間取りを考えることも重要です。

3.コワーキングスペースやバーチャルオフィスの有無

フリーランスエンジニアに必ずしも必要なものではありませんが、コワーキングスペースやレンタル会議室、住所の登記にも使えるようなバーチャルオフィスの数は首都圏の比ではないほど少なく限られています。十分なスペースやクオリティがないことや、車で訪れる必要があるのに駐車場が不十分など難点も多いです。

こうしたフリーランスエンジニアひいては小規模な法人や自営業として必要になる環境がどの程度揃っているかどうかは移住前に確認する必要があります。

私のように本当に山奥の田舎に住みたいという願望があったとしても、地方では県庁所在地などの中心地から車で数十分程度でたどり着けるような手付かずのド田舎が数多く存在します。特に平野の少ない場所(北海道以外の大抵の都道府県)では似たような環境ですから、無理に本当の山奥に住まずにほどほどにアクセスの良い場所を探すことをおすすめします。

どれだけ田舎であっても中心地まで足を運べばコワーキングスペースやバーチャルオフィスの所在地もいくつかはあるものです。

4.災害に強い場所に住む

フリーランスエンジニアのみならず地方移住をする場合に重要なポイントが災害への強さです。特にフリーランスエンジニアは災害に遭ったとしても誰から保障を受けられるわけでもなく、働けなければ働けなかった分だけ収入が減ります。災害への備えは人一倍注意をする必要があります。

地方が東京に比べて発展しなかった理由は物流や平地が少ないなどの地理的な要因もありますが、自然災害が起こりやすく被害が生じやすいことも大きな原因のひとつです。地方は東京に比べて人口密度こそ低いものの、そもそも広大な平野のある首都圏とは異なり山と海のあいだの小さなスペースのなかでギリギリの状態で暮らしている地域が多いです。地盤も軟弱であることが多く、いまだに田んぼの跡地を地盤改良もそこそこに新築を建てて販売していることも珍しくありません。市や県の中心地が地震や津波によりほぼ水没することが確定しているような地域もあります。

そんな中でも強い地盤や高台、洪水や土砂災害が想定されず、電気ガス上下水道などのインフラがよく整えられたエリアは高価で、ド田舎なのに首都圏内の一部の地域を超えるような驚くような地価が付いていることも珍しくありません。またそんな好条件の土地が空いているわけもなく、誰かが退去するのを待って中古住宅を購入し、必要に応じてリフォームや建て替えなどをする必要があります。

たいていの場合、こうしたエリアはそこそこ良い住宅地になっていたりしてお金がかけて作られた家が多いので、築20年程度ならリフォームだけで十分なことも多いです。私自身、移住後はしばらく賃貸住まいをしながらいろいろな土地、物件を見に行きましたが良い場所には良い家が建っているものです。こうした土地は都道府県が用意する各種ハザードマップでも見つけ出すことができますが、地元民が「〇〇は地盤が良い」などの口コミの情報も重要だったりします。ただし、そうした住宅地があったとしても、そのなかでも斜面に近い場所や山が近い場所は地震や津波の影響を受けなくとも洪水や土砂災害のハザードマップを確認すると危険なエリアに入っていることもあるので注意が必要です。

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