レモンやみかんなどの柑橘類をたくさん収穫し、木をより良い状態に保つための剪定の方法を解説します。
▼柑橘類の育て方全般について、季節ごとに作業項目をまとめた記事はこちら。
実は簡単な剪定
柑橘類の剪定について調べると専門用語も多くわかりにくい解説がとても多いです。もちろん本業でレモンやみかんを育てる柑橘農家さんであれば最大効率で収穫を得るために最適化された剪定を行う必要があります。しかし、趣味で育てる分にはそれほど難しく考える必要はありません。
剪定の目的は非常にシンプルです。
枝葉が密集しすぎず満遍なく日が当たるようにする
気を付けなければいけないのはこの1点のみです。いろいろな剪定に関する手法や情報がありますが、この1点さえ守れていればどんな形に剪定しても構いません。
柑橘類の果樹の剪定は大きく分けて冬の終わりから春先ころに実施する「年1回の剪定」と春から秋のあいだに行う「日々の剪定」に分けることができます。いずれも目的や考え方は変わりませんが基本的に「年1回の剪定」がメインの剪定です。「日々の剪定」はやや難易度が上がりますが、これにより「年1回の剪定」で木に与える負担を軽減することができます。難しい場合は「年1回の剪定」だけで十分です。
剪定では一度に多くの枝を切り落とすため木への負担が大きくなります。芽吹いたばかりの若い芽を摘むより太く育った枝を切り落とす方が木への負担が大きいです。「日々の剪定」では無駄な若い芽を摘んでおくことで「年1回の剪定」で切り落とす枝葉を減らすこと木への負担を減らすことができます。
※ここでは便宜上「日々の剪定」と言っていますが、内容としては「芽かき」です。
年1回の剪定(1月~3月ころ)
年1回の剪定は冬の終わりから春先の1月から3月ころに行います。あまり厳密に考える必要はありません。寒さが厳しい時期であればだいたいいつでも大丈夫です。逆に暖かくなりすぎると剪定の適期を逃してしまうので、気持ち早めの1月か2月ころに剪定を済ませてしまうと安心です。一番適しているのはレモンから新芽が芽吹き始める時期です。冬を越して「厚手のダウンを着ると流石に暑いかなぁ」という時期が頃合いでしょう。
剪定ばさみと癒合材を用意する
剪定には必ず剪定ばさみを使用します。
剪定ばさみ以外を使用すると力が要るため怪我の恐れがあるほか切り口が非常に汚くなります。剪定は繊細な作業であり汚い切り口は木に負担と病気のリスクを負わせることになります。一度買えば長く使うことができるので樹木の世話をするのであれば1本用意しておくと良いでしょう。
また枝を切断した切り口には癒合材を塗ります。なくても構いませんがあった方がリスクを防げるうえ安価でたっぷり入っているので購入をおすすめします。
剪定の必要性を見極める
柑橘類の果樹を健全に育て果実を収穫するには基本的に年1回の剪定が重要です。ただし特に若い木であれば剪定が不要な場合もあるため剪定の必要性の有無をよく確かめる必要があります。
剪定が必要なケースは以下の3つです。
- 大きく育ちすぎている
- 枝葉が密集している部分がある
- 不格好に伸びた長い枝がある
逆に以上3つのケースのいずれにもあてはまらない場合には剪定は不要です。それぞれ解説しながら剪定方法を紹介していきます。
ケース1:大きく育ちすぎている
柑橘類の果樹は限度はあるものの放っておけばどんどん大きくなります。
もちろんスペースがあれば大きくしても構いませんが、多くの場合は庭のスペースなどの都合で木の大きさの限界があるはずです。また上に高く伸びすぎれば管理も難しくなります。こうした高すぎる枝や広く伸びすぎた枝は剪定で調整する必要があります。また、大きさだけでなく理想とする木の形があればこの時に形を整えます。
収穫量を最大化したい農家さんであれば理想的な木の形が存在しますが、自家栽培であれば自分の好きなように形を決めて構いません。単純に「ここは長すぎて見た目のバランスが悪いな」みたいなポイントがあればそこをカットすればOKです。木の形を考えるときのポイントとしてはすべての枝葉に日の光がよく当たることを気にかけておくと良いです。
この時のポイントは枝の根元から切り落とすことです。カットする場所は、下図で示している通り枝の根本です。
悪い例 | 良い例 |
枝の途中で切断する | 枝を根元から切断する |
枝を途中で切断すると残った枝の見た目が悪いだけではなく、その枝から小さな芽が複数出てきます。これが育つと切った部分から枝分かれするように新しい枝が生えてしまいます。逆にこの特性を生かして新しい枝を狙った位置に生えさせることも可能なのでチャレンジしてみても良いでしょう。
ケース2:枝葉が密集している
柑橘類は葉の枚数が多ければ多いほど果実をたくさん収穫できます。とはいえ、あまりにも葉が多すぎると日が当たらない葉や風通しの悪い葉が出てきてしまいます。葉は光を浴びて光合成することが知られている通り、たくさんあっても日光を浴びられなければ意味がありません。そればかりか葉が密集しすぎて風通しが悪い部分があると病害虫の発生源になってしまうのです。
このように密集しすぎた枝葉がある場合には剪定の必要があります。日差しを遮っている枝や密集しすぎた枝を根元から切り落とします。
こうした枝葉の密集を避けるために木の内側に伸びる枝や交差する枝を剪定すると書籍では説明されていますが、実際に木を目の当たりにするとよくわからなくなると思います。あまり深く考えずに日当たりを良くするイメージで剪定すれば趣味のレベルでは全く問題ありません。
自然で綺麗な木の形に近づけるためにも、枝葉が密集したエリアを見つけたら流れに逆らうような変な向きに伸びた枝を切れば良いでしょう。
ケース3:実をつけにくい長い枝がある
柑橘類の果樹において長く伸びすぎた枝は果実をつけにくい傾向があります。
自分の理想とする木の形を作るためにあえて伸ばす場合を除いて、やたらと長くてひょろひょろ伸びた枝があれば切り落として構いません。根本から切り落としても構いませんが途中で切り落とすとそこから新しい芽が出て数本の枝に分岐します。新しい芽から伸びた枝には果実をつけやすいことや、途中で切り落とすと分岐する特性を考えて剪定すると良いでしょう。
難しい場合にはほったらかしにして来年考えても良いでしょう。
年1回の剪定のやり方まとめ
剪定に関する書籍や情報を探すと難しいことがいろいろと書かれていますが、ポイントとしては以下の2点だけです。
- 自分の好きな形にする
- 日当たりと風通しを良くする
自身の望む大きさや形にあわせて「この枝は伸びたらちょうど良くなりそう」「この枝はちょっとバランスが悪いな」など判断しながら剪定していけば良いです。その際に日当たりや風の通りなども考えてあげるとなお良いでしょう。難しく考える必要は全くありませんが、以下の2点だけ頭に入れておくと良いでしょう。
- 枝を途中で切ると分岐して複数本の枝が伸び始める
- 分岐させたくなければ根元から切り落とす
日々の剪定(夏~秋)
日々の剪定では不要な芽を摘み取ります。レモンは冬以外の時期は常に成長を続けます。
▼このように、新しい芽がどんどん出てきます。
こうした芽は基本的に放置して成長させれば良いのですが、芽吹いた時点で将来的に剪定が必要になると予想できる場合があります。
剪定の条件は先ほど解説したように以下の3点です。
- 大きく育ちすぎている
- 枝葉が密集している
- 実をつけにくい長い枝がある
1番目と3番目は成長してみないとわかりませんが、2番目は芽が出た時点でおおよそ予想がつきます。新しい芽が出たら、その芽が成長して枝になった時のことを想像してみてください。
「ここに枝が新しく増えたら日が遮られるな」
「ここに枝が増えたら密集しすぎるな」
という風な予想がつく場合には、芽の小さなうちに摘み取ってしまいましょう。もちろん成長してから剪定しても構いませんし、わからないのに無理に摘み取る必要はありません。しかし、小さな芽のうちに摘み取ってしまえば木への負担は小さく、年に1度の剪定で生い茂り過ぎた木を前に頭を悩ませる必要もなくなります。
次に、夏と秋に出てきた芽は摘み取ります。
時期があいまいですが、おおよそ6月以降に新しく出てきた芽はすべて摘み取って構いません。
夏・秋に出てきた芽が成長すると、長く伸びすぎて実が付きにくくなる場合やほとんど成長が見込めずこれまた実が付きにくい貧弱な枝になることが多いです。基本的に春~秋の間に出てきた芽をすべて残すと枝葉が生い茂り過ぎて剪定が必要になります。出来るだけ芽が出た時点で摘み取ってしまうと良いでしょう。
逆に木のボリュームを出したい場合などは夏・秋に出てきた芽をそのまま伸ばすことで枝葉の数を増やすことができます。
さいごに
柑橘類の果樹の剪定方法を解説しました。
▼柑橘類の果樹の育て方全般について、季節ごとに作業項目をまとめた記事はこちら。