スチール製レイズドベッドが販売され、日本でもモダンなレイズドベッドが入手可能に。

ガーデニング

レイズドベッドとは、草花や野菜・果物を育てるための手法のひとつで、プランターに植物を植える「プランター栽培」と地面に直接植える「露地栽培」の良いとこ取りをした手法です。

特に狭小地や痩せた土地、都市部の菜園などで採用されることが多く、少ないスペースで草花や野菜の栽培を最大化させることができる上にオシャレな見た目が特徴です。一般家庭の庭で家庭菜園を楽しむには最適な手法であるものの日本国内では普及が遅れていました。その歴史は古く、日本では高畝栽培に近く、海外ではヒューゲルカルチャーと呼ばれる伝統的な有機農法に端を発しているとされています。1

レイズドベッド自体は地面に石材や木材、鋼材を利用した枠を用意して土を入れるだけのシンプルなものですが、手軽に始められる製品がほとんど存在せず木材を使用した自作がポピュラーな始め方でした。

木材を使用したレイズドベッドの例

海外では錆に強い表面処理が施された「ガルバリウム鋼板2」を使用したモダンなレイズドベッドが人気で、国内では一部のネットショップで割高な製品を輸入するしか購入する術がありませんでした。そんななかでようやく国内で製品化を始めたのがガーデン用品を広く販売するタカショーの「ベジタブ」です。

平板と曲板を組み合わせることで円形から楕円形まで好みのサイズのレイズドベッドが立ち上げ可能ですが、高さが29cmと45cmの2パターンのみとなります。腰を曲げたり屈むことなく手入れが可能な高さ60cmやそれ以上のバリエーションの追加が待たれます。立ったまま手入れができる製品としては同じくタカショーからベジトラグが販売されているため差別化を図っているのかもしれません。

レイズドベッドとして考えたときに1点気になるのが素材です。金属製のレイズドベッドでは鉄の薄い鋼板に補強のため波型や角波型の成形が施された波板鋼板や角波板鋼板が使用されます。鉄は簡単に錆びてしまうため、亜鉛メッキや亜鉛とアルミニウムなどの合金をメッキを施した製品が多いです。亜鉛メッキをした鋼板に日本では「トタン」などとして知られ、亜鉛とアルミニウムなどの合金をメッキしたより耐食性の高い鋼板は「ガルバリウム鋼板」などとして知られます。

ベジタブにはいずれのメッキも施されておらずに塗装された鋼板を使用しています。レイズドベッドは植え付けや植物の世話をする際に金属製のシャベルなどが当たることも多いです。ベジタブは焼付粉体塗装により強固な塗膜を形成していますが金属が強くぶつかれば簡単に欠けてしまうこともあります。こうしたときに犠牲防食作用があるガルバリウム鋼板であれば多少の傷には耐えることができますが、ただの塗装ではあっさりと傷口から錆が広がり塗装の下で錆が蔓延してしまいます。

とはいえ、実際のところガルバリウム鋼板でも亜鉛メッキだけのトタンであっても定期的な塗装によるメンテナンスは必要です。ベジタブは最初のメンテナンススパンが少し短いだけでそれほど大きなデメリットではありません。
単純な傷への強さはメッキが一概に強いとは言えず、同種のメッキや塗装でも品質には大きな差があるため優劣をつけることはできません。

国内ではレイズドベッド自体の認知度が低く、庭で家庭菜園をすると言えばプランター栽培や庭を耕して行う露地栽培が一般的です。そのため量産効果が得られずに価格も割高となっています。ガルバリウム鋼板を採用すれば更に高価格になってしまうでしょう。ガルバリウム鋼板自体は国内でも建材として広く利用されているためレイズドベッドの普及が進むにつれて価格も抑えられ、ガルバリウム鋼板を始めとした耐食性に優れた素材のレイズドベッドが多くのメーカーから販売されることに期待したいです。

  1. 実際のところ、レイズドベッドの特徴である地面に土を盛り上げて植物を栽培する手法は世界各地で農法の進化とともに自然と発生あるいは拡大しており、レイズドベッドという呼称も盛り上げた土を囲う構造を示す幅広い意味を持つ名前です。 ↩︎
  2. 海外製品でガルバリウム鋼板という旨の表記がある場合には国内で流通するいわゆる「ガルバリウム鋼板」とは意味が異なり、シンプルな「亜鉛めっき処理済の鋼板」という場合が多いです。この場合、日本でも昔から存在するトタンと同じ表面処理を意味します。 ↩︎
タイトルとURLをコピーしました