果樹のなかでも柑橘類は小さなお庭でも育てやすいことから人気が高いです。レモンやみかん、ゆずや文旦などホームセンターや園芸店に足を運べば豊富なバリエーションが存在します。そんな柑橘類は一度植えれば移動は難しく、草花のように数年で枯れてしまうこともありません。
柑橘類の栽培方法は当サイトでも多く紹介していますが、今回はこれから苗木を買おうと検討されている方向けに事前に知っておいた方が良い知識や必要な準備について解説します。
柑橘類は育てやすいけど「寒さ」と「カミキリムシ」が大敵
柑橘類は大きくなりすぎず育てやすく身近な果実が収穫できるなど魅力たっぷりの果樹ですが、唯一の大敵が「寒さ」と「カミキリムシ」です。
日本各地のご家庭のお庭に植えられていることから寒さ・暑さには強いと思われがちですが、元々温暖な地域の植物であり寒さへの耐性が低いです。-3度を下回ると枯れて死んでしまうリスクが高まるとされますが、これより高い温度でも風などの気象条件次第で枯れたり弱ったりしてしまうことがあります。特に木が小さいころは寒さの影響も受けやすく、ある程度木が大きくなるまでは「越冬」のための対策が必要になります。
詳しくはこちらの記事で解説していますが費用も数百円で済むうえ簡単なので「冬前に準備が必要」という点だけは事前に頭に入れておくと良いでしょう。
続けて「カミキリムシ」による虫害です。
果樹の栽培経験がなければあまりピンと来ないかもしれませんし、子供時代に虫捕りをしたことを思い出される方も居られるかもしれません。基本的に柑橘類は病害虫に弱くありませんしほったらかしでも成長するほどなのですが唯一木を枯らしてしまうほどのダメージを与えてくるのが「カミキリムシ」です。また草木に害を与える虫としては最大級の大きさなので、虫が苦手な人にとっても大敵と言えるでしょう。
果樹の栽培において大抵の病害虫は農薬で適切に対処することで予防したり駆除したりすることができます。しかし大型の甲虫であるカミキリムシは対策が難しく「捕殺」と言って読んで字のごとく捕まえて退治するしかありません。殺虫スプレーなどもありますが、そもそも寄り付かせないための予防が困難です。このカミキリムシは木のなかに卵を産み付け、孵化すると幼虫が木の中を食い荒らして木を枯らしてしまいます。また柑橘類を好むことでも知られています。木が枯れてしまってからよく観察すると、幹に穴があいておりカミキリムシの仕業だと判明するのはよくあることです。
常に監視して見つけ次第捕まえるのは現実的ではありませんが、カミキリムシに穴をあけられると木の幹に小さな穴が見つかります。また株本に木の粉が積もることから株本を綺麗にしていれば早期に発見することができます。早期に発見できれば、こうした専用の殺虫剤を使って穴に噴射することで退治することができます。
事前に準備する必要はありませんが寒くなったら冬の準備、暖かくなったらカミキリムシに警戒するようにしましょう。
柑橘類の植え付け位置
柑橘類は多くの果樹の例に漏れず日光を好みます。また風通しが悪く湿度が溜まると病害虫の原因になります。可能な限り開けた日当たりの良い場所に植え付けると良いですが、多少の悪条件には耐えてくれますので日中ほとんど建物の陰になるような場所や隙間のない塀に囲まれた場所でもなければ問題ありません。
これ以上に気を付けるべき点として、収穫や日頃のお世話のためにも壁沿いや角地に植えないようにすると育てやすいです。特に苗木のころは枝葉も少なくスカスカですから良いのですが、ある程度成長すると壁沿いや角地の奥は目視で確認もできず手が届かなくて世話もできないことになってしまいます。また風の強い日に枝葉や果実と壁がこすれると葉や果実が落ちたり木を弱らせることにつながってしまいます。成長したあとでは移動も困難になるので、後々木が大きくなって枝葉が茂ったときのことをイメージしながら植え付け位置を決めると良いです。
高さは品種にもよりますが最大で3メートル程度まで成長し横にも広がります。樹高や枝葉の広がり、全体の大きさは剪定することである程度コントロールできます。また鉢植えの場合にはそこまで大きく成長することはありません。地植えでも鉢植えでも剪定は必要になりますが、おおよそ苗木で購入してから2~3年は剪定をせず自由に成長させても構いません。
剪定は冬の寒さの厳しい時期が適期です。この時期さえ守ればそれほど難しくありませんから購入から2~3年経った頃や枝葉が邪魔になったときには剪定が必要と覚えておくと良いでしょう。
地植えなら地面をよく耕す
お庭の地面の状況はご家庭によりまちまちですが特に硬く締まった地面ではうまく根が張れないことがあります。剣先と呼ばれるこうした尖ったスコップで植え付け位置を耕すと思いますが、硬かったり石が多くてちっとも掘れないという場合には注意が必要です。
地面が硬すぎて根が張れない場合、地表面近くに広く根を伸ばしてなんとか成長してくれますが成長は芳しくなく肥料もうまく受け取れずに思ったように成長しなかったり、果実が収穫できなくなってしまいます。これも植え付けてからでは遅いため、事前によく耕す必要があります。
目安としては深さ・直径ともに50cm以上掘り起こして腐葉土やバーク堆肥など肥料分の少ない資材を混ぜると良いです。できればもっと耕したいところですが、スコップの刃が立たないような硬い地面を手で耕すのは50cm程度が限界だと思います。自然に土壌が改良されるのに期待して、石などは除去して腐葉土やバーク堆肥などを混ぜ込みましょう。水はけの悪い場合にはバーミキュライトなどもあわせて混ぜ込むと良いです。硬い土といっても内容はお庭によって様々ですが、元々の土に対して2割程度を腐葉土やバーク堆肥、同じく2割程度をバーミキュライトに変えると良いです。またこの時に有機石灰もパッケージに記載の分量混ぜ込むと良いです。
肥料は絶やさないが、冬には無くす
柑橘類は春から秋にかけて花をつけて果実を実らせるため、冬を除いた3シーズンは常に肥料を効かせる必要があります。特に春先の肥料は多く、冬前には肥料をきっちり絶つと良いのですが果樹の栽培経験がないといまいちピンとこないと思います。こちらの記事で詳しい解説もしていますが、柑橘類は人気の果樹というだけあって専用の肥料がたくさんあります。肥料の与え方も簡単でパッケージに書いてある通り(だいたい年に3回)与えるだけなのであまり難しく考える必要はありません。
とにかく肥料を適切に与えられればよく育ってしっかり果実が実りますから、こうした専用の肥料を買ってパッケージの説明に従って肥料を与えると良いです。こだわりたくなった際にはこちらの記事で肥料の与え方を詳しく解説しています。