ジャガイモ栽培において、なんといっても重要なのが「芽かき」です。
「芽かき」とは、種芋から次から次へと出てくる芽を除去する作業ですが、これをしないと芽がどんどんと増えてしまいます。
通常は野菜や果物の種を植えると、種から1つの芽が出ます。
これがジャガイモの場合、種芋から複数の芽が出てくるのです。
つまり、種芋から出た複数の芽を育てるということは、野菜の種を一カ所にまとめて蒔いてギュウギュウ詰めで育てるのと同じことです。
枝葉が鬱蒼と生い茂り過ぎて、一つ一つのジャガイモが大きくなりません。
そのため、芽の数を2〜3本程度に調整するのが一般的です。
実際には家庭菜園レベルであれば芽かきせずに放置しても育てることは可能です。
ただし、芽かきが不十分で枝葉が生い茂り過ぎると大きな問題が生じることがあります。
枝葉が生い茂り過ぎると何が問題なのか?
枝葉が元気に生い茂ったとして、一体何が問題なのでしょうか?
元気に育ってたくさんジャガイモを実らせた方が良いのでは?なんて思われるかもしれません。
確かにその通りです。
全ての芽が育ち、枝葉が十分によく伸び、光合成をしてジャガイモをたくさん実らせてくれれば言うことありません。
しかし、実際には枝葉があまりにも生い茂り過ぎると色々と厄介な問題が出てくるのです。
問題1.枝葉が伸びるスペースがなくなり倒伏する
まず始めに枝葉が生い茂り過ぎると、枝葉が伸びるだけの十分なスペースがなくなってしまいます。
これは枝葉が生い茂りすぎたジャガイモの例です。
写真の下側を見ると、地面に向かって垂れている枝があります。
実はここに写っている枝葉の多くが地面に向かって垂れさがっているのですが、紐で支柱に括り付けて無理矢理立たせている状態です。
すべてのジャガイモの枝葉は一つの種芋から出てきています。
芽が若いころは問題ありませんが、枝葉が生長し始めると十分に葉を広げるスペースすらなくなります。
そのため徒長の有無も関係なく場所を求めて枝葉が地面を這うように生長したり、徒長して自身の重みを支えきれずに倒れてしまうのです。
地面に接した葉っぱは病気をもらいやすく、光合成が十分に行われない可能性もあります。
問題2.枝葉が過密になり通気性が落ち病害虫の被害に遭いやすくなる
先ほど紹介した写真のようにジャガイモが生い茂りすぎると問題になるのが、内部の蒸れです。
これだけ生い茂ったジャガイモの内側は枝葉が密集しており通気性が確保できません。
例えば先ほどの写真のジャガイモの株本を真横から写した写真を紹介します。
ご覧の通り、向こう側が見通せないくらい枝葉が密集しています。
このように通気性が確保できず、湿度が高い部分ができる病気や害虫の被害を受けやすくなります。
問題3.枝葉が過密になり光合成が出来なくなる
同様に、これだけ枝葉が密集すると内側の葉はまともに日光を浴びることができません。
結果として光合成ができなくなってしまうのです。
ジャガイモは一つ一つの芽に対して複数のジャガイモを実らせます。
芽かきをせずにたくさんの芽を育てれば、それだけたくさんのジャガイモを実らせることができます。
しかし、たくさんの芽をそのまま生長させた場合には、これまで紹介した写真のように枝葉が密集しすぎてしまうのです。
結果として一本一本の芽が十分に成長できず、また十分に光合成が行えないためジャガイモを大きく生長させることができなくなってしまいます。
ジャガイモを芽かきせずに育てようとすれば、一つ一つの芽を放射状に誘引し、それでも足りない分を支柱等で丁寧に誘引する必要があるでしょう。
おそらく1株あたり直径2mかそれ以上のスペースを確保する必要が出て来ます。
問題4.ジャガイモが育つスペースがなくなる
これまで紹介した写真のように鬱蒼と生い茂るジャガイモの枝葉ですが、それらはすべて一つの種芋から伸びてきています。
そして、種芋から伸びた土中の茎の部分にジャガイモが実ります。
芽が2本、3本程度なら問題ないでしょう。
しかし、目が5本、10本となるとどうでしょうか?
そもそも土のなかにジャガイモが育つことができるスペースがなくなってしまうのです。
枝葉を生い茂り過ぎないようにするには?
そもそも、なぜ枝葉が生い茂り過ぎて過密になるのでしょうか?
その原因は「芽かき」が不十分なことにあります。
(肥料過多や日照不足により徒長したり枝葉ばかり生育することもありますが、大半は芽かきが足りなかったことが原因です)
よくあるケースは、生育初期に一度だけ芽かきをして、それ以降芽かきを怠ってしまうケースです。
ジャガイモの芽は、一度にまとめて出てくるわけではありません。
それに加えて、芽かきのときにうまく芽を除去できていないと、それが生長して新たな芽として芽吹いてくることもあるのです。
家庭菜園であれば株数は限られますから、最初の芽かきから数週間はたまに株本をチェックしてみましょう。
余分な芽が出ていた場合には速やかに除去するのが肝要です。
枝葉が生い茂り過密になった場合の対処法
それでは枝葉が生い茂り、実際に過密になってしまった場合にはどのように対処すれば良いでしょうか?
一般的に、ジャガイモは初期の芽かき以降は枝葉を間引いたり、大きく育った芽をかき取ることは推奨されません。
実際にジャガイモの栽培方法が紹介されたWebサイトや書籍でも、初期の芽かき以降に枝葉を間引いたり収穫前なのに芽かきをするような手順が解説されていることはないでしょう。
これは、芽かきが不十分だったり肥料過多で枝葉が生い茂り過ぎた場合を想定していないだけで、実際に過密になった場合には大きく分けて以下の3パターンで対処をしていきます。
対処法1.枝葉を間引く
一つ目の方法は枝葉を間引く方法です。
枝葉が生い茂った場合に生じるデメリットの多くは、通気性が悪くなったり、光合成ができない葉っぱが出てきてしまうことに起因します。
そのためその原因である多すぎる枝葉を除去することで、病害虫の被害だけでも抑えようというのがこの1つ目の対処法です。
具体的には、下図のように「生い茂ってるなぁ」「通気性悪そうだなぁ」という混みあった部分の枝葉を取り除いてあげれば良いのです。
実際には、枝葉の切り口から病気になることもあるため一概におすすめできる方法ではないのですが、通気性が悪い方がよっぽど病害虫の被害を受けやすいと感じているので私はこの方法を採用することが多いです。
また、次に紹介する2番目の対処法は、収穫期直前になるとなかなか現実的ではありません。
そのため収穫期間近(収穫期~1カ月前くらい)に枝葉が多すぎることに気が付いた場合にはこの方法で対処することが多いです。
実際に枝葉を間引いたジャガイモの写真が以下の通りです。
▼枝葉を間引く前のジャガイモの株本。奥が見通せないほど過密。
▼枝葉を見びいた後のジャガイモ。奥が見通せる。
対処法2.芽かきをする
次の対処法は芽かきをするという方法です。
芽かきが不十分な株の場合、収穫期直前だろうと株本を見ると太いしっかりとよく育った茎と、細くて弱弱しい茎があることに気が付くはずです。
この細くて弱弱しい茎は、健全に生長できていない芽ということになります。
芽かきをするなら、こうした細くて弱弱しい茎が優先順位高めです。
ただし、ここで芽かきをしようとするといくつかの問題に直面します。
特に収穫期まで間もない時期になると、いくら細い茎であろうとその土中には既に膨らみかけたジャガイモがある可能性があります。
そのため、種芋から芽をかき取る通常の「芽かき」が困難な場合があるのです。
そもそも種芋自体原形を留めていない場合もあります。
つまり、下図のような通常の芽かきは困難です。
そこで、芽を株本からカットして除去する方法がおすすめです。(下図の赤線でカット)
少し地面から離れた場所でカットすれば病気の心配も減ります。
とはいえ、この方法は一長一短です。
例えば、先ほどの方法で芽かきをした場合としなかった場合の収穫できるジャガイモを比較してみましょう。
ここまで単純計算にはならないのですが、極端な例として見てみてください。
芽かきをしなかった場合、すべてのジャガイモがある程度成長して中くらいのジャガイモが収穫できることが見込めます。
上図で言えば、中くらいのジャガイモが9つ収穫できることになります。
芽かきをした場合、残った芽の分のジャガイモが大きく生長することが見込めます。
逆に、芽かきをした分はそれ以降成長が見込めません。(経験上、腐ることはありません。)
上図で言えば、大きいジャガイモが6つと、小さいジャガイモが3つ収穫できることになります。
対処法3.茎が折れない程度に支えて放置する
最後の対処法は最も消極的な対処法です。
一般的にジャガイモの枝葉を支柱で支えることはしませんが、生い茂ったり徒長した枝葉は容易に倒伏してしまいます。
晴天時は問題なくても、雨風に吹かれた後に確認すると高確率で倒伏しています。
そのため、支柱で支えてやります。
このときに単純に倒れた枝葉を支柱に括り付けるのではなく、出来るだけ枝葉を分散させるように支柱に固定すると良いでしょう。
通気性を確保し、出来るだけ光合成ができるようにしてあげるわけです。
特にプランター栽培や袋栽培などをしている場合、倒伏すると簡単に茎が途中でポッキリと折れてしまいます。
これを避けるためにも、適度に支柱で支えてやる方法がおすすめです。
これでも通気性が確保できず、まだまだ密集しているという場合には「対処法1.枝葉を間引く」をあわせて実施すると良いでしょう。
まとめ
主に芽かきが不十分でジャガイモが鬱蒼と生い茂り、過密になってしまった場合の原因と対策をまとめてみました。
芽かきをしていれば、こうなることはほとんどないのですがウッカリ見逃して茂らせてしまうことがあります。
個人的におすすめな方法としては、以下の通りです。
- 「対処法3.茎が折れない程度に支えて放置する」で過密を回避する
- それでもまだ過密なら「対処法1.枝葉を間引く」を実施する
- それでもどうにもならないほど過密なら「対処法2.芽かきをする」を実施する
収量を減らさず、病害虫のリスクを抑えつつ対策するという意味で上の順番で対処することをおすすめします。
ただし、そもそもの原因は「芽かき」が不十分なこと。
くれぐれも植え付け初期の株本には注意を向けるようにしてみてください。