車の前照灯はハイビームが基本です。
最近では自動的にハイビームとロービームを切り替える機構が登場し「ハイビームが基本」ということの認知度が高まってきています。
その一方で、こんな声も聞かれます。
- 対向車がいてもハイビームを付けっぱなしの車がいてまぶしい!
- ロービームでもまぶしい車がいて迷惑!
- 後ろの車のライトがまぶしい!
ハイビームを付けっぱなしでまぶしい車、これって違反なんでしょうか?
また、ロービームでもまぶしい車は違反になるのでしょうか?
これって違反?シリーズでは交通法規=道路交通法を主体にしていますので、道路交通法の観点で見ていきましょう。その他の刑法に触れるケースなどもありますが、このシリーズ内では道路交通法のみに着目しています。
これって違反?シリーズでは、道路上でよく見かける「これってどうなの?」というちょっとお行儀が悪い運転マナーについて道路交通法の観点から分析しています。
こちらのリンクからすべての記事の一覧がチェックできますので是非ご覧ください。
交通法規における該当項目
対向車がいてもハイビームで走行する行為は道路交通法における1つの項目に触れる可能性があります。
第五十二条二項
対向車がいてもハイビームで走行する行為において最も該当しそうな項目は道路交通法第五十二条の二項です。
第五十二条二項の条文は以下の通りです。
2 車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。
わかりやすく解説すると、対向車や前を走る車がまぶしく感じる場合にはロービームに切り替えなければいけないということです。
つまり、ハイビーム付けっぱなしの対向車や後ろの車はこの第五十二条に違反しています。
また、ロービームであってもまぶしい場合には整備不良が疑われますが、この第五十二条の二項にも適用されます。
道路交通法上ではロービーム・ハイビームを明確に区別していません。
そのため、ロービームがまぶしい車両では適切に「光度を減ずる」必要があります。
しかし、「光度を減じた」結果として適切に前方を照らせなくては第五十二条に違反することになります。
つまりロービームがまぶしい車両は整備不良(第六十三条違反)とあわせてこの第五十二条違反にあたります。
なお、道路交通法においては故意(気づいていながら修理しなかった)や過失(故障に気づいていなかった)による扱いの差は示されていません。
第六十三条
特にロービームがまぶしい車両についてはこの第六十三条に違反する可能性があります。
また、八項まで続く長い文章ですので条文は最後に掲載します。
内容をまとめると以下のようなものです。
- 警察官は整備不良車を停止させることができる
- 不良個所の整備や整備完了までの運転を禁じることができる
- ただし警察官が許可証を交付する場合に限って限定的に運転が許される
- 整備不良と判断された場合には標章を見やすい場所に貼り付ける必要がある
- 整備が完了し最寄りの警察署で許可が出るまで標章を取り除いてはいけない
ロービームがまぶしいということは、そのまま走行すれば第五十二条に違反します。
しかし、第五十二条を守ろうとすれば無灯火で走行することになります。
そのためロービームは夜間の走行ができない整備不良車ということができます。
参考までに第六十三条各項の条文は以下の通りです。
第六十三条 警察官は、整備不良車両に該当すると認められる車両(軽車両を除く。以下この条において同じ。)が運転されているときは、当該車両を停止させ、並びに当該車両の運転者に対し、自動車検査証その他政令で定める書類の提示を求め、及び当該車両の装置について検査をすることができる。
2 前項の場合において、警察官は、当該車両の運転者に対し、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図り、又は他人に及ぼす迷惑を防止するため必要な応急の措置をとることを命じ、また、応急の措置によつては必要な整備をすることができないと認められる車両(以下この条において「故障車両」という。)については、当該故障車両の運転を継続してはならない旨を命ずることができる。
3 前項の場合において、当該故障車両の整備不良の程度及び道路又は交通の状況により支障がないと認めるときは、警察官は、前条の規定にかかわらず、当該故障車両を整備するため必要な限度において、区間及び通行の経路を指定し、その他道路における危険又は他人に及ぼす迷惑を防止するため必要な条件を付して当該故障車両を運転することを許可することができる。この場合において、警察官は、許可証を交付しなければならない。
4 警察官は、第二項の規定による措置をとつたときは、当該故障車両の運転者に対し、当該故障車両について整備を要する事項を記載した文書を交付し、かつ、当該故障車両の前面の見やすい箇所に標章をはりつけなければならない。
5 警察官は、前項の措置をとつたときは、その旨を当該措置をとつた場所を管轄する警察署長に報告しなければならない。
6 警察署長は、前項の報告を受けたときは、当該故障車両の使用の本拠の位置を管轄する地方運輸局長に対し、内閣府令・国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。
7 第四項の規定によりはり付けられた標章は、何人も、これを破損し、又は汚損してはならず、また、当該故障車両の必要な整備がされたことについて、内閣府令・国土交通省令で定める手続により、最寄りの警察署の警察署長又は車両の整備に係る事項について権限を有する行政庁の確認を受けた後でなければ、これを取り除いてはならない。
8 第三項の許可証の様式、第四項の規定により故障車両の運転者に対し交付する文書の様式及び同項の標章の様式は、内閣府令・国土交通省令で定める。
(罰則 第一項については第百十九条第一項第六号 第二項については第百十九条第一項第七号 第七項については第百二十一条第一項第九号)
(運行記録計による記録等)
道路交通法に違反しない運転
対向車や前方に車がいてもハイビームの車のうちで、違反とならない運転方法や車は存在しません。
ただし、近年では光の配分を制御してハイビームのまま対向車がいるエリアだけ減光する仕組みも登場しています。
こうした仕組みを利用する車両はその限りではありません。
罰則について
対向車や前方に車がいてもハイビームの車は、ここまで解説した通り第五十二条および第六十三条に違反している可能性があります。
これらの違反行為に適用される罰則は以下の通りです。
減光等義務違反
第五十二条二項に対する違反行為を「減光等義務違反」と呼びます。
点数は1点で、普通車や二輪車であれば6,000円の罰金となります。
整備不良
第六十三条に対する違反行為を「整備不良」と呼びます。
罰則は重くなります。
特に重大に事故につながる恐れのある灯火類の故障では2点で、普通車は9,000円、二輪車は7,000円の罰金となります。
それ以外の影響の軽微な灯火類では1点で、普通車は7,000円の罰金となります。
違反点数について
対向車や前方に車がいてもハイビームの車が与えられる罰則としては最大で3点になると思われます。
(実際に複数の異なる違反が重なることはありませんが・・・)
過去に運転免許の停止処分を受けたことがない方であればあと3点で30日の免許停止となります。
もし過去3年間で一度でも免許停止処分を受けていれば、あと1点で60日の免許停止となります。
気軽に違反しがちな項目とはいえ、しっかりと取り締まられれば軽くない違反点数が付与されることになります。
違反車両を見かけた場合
残念ながら道路交通法の取り締まりは取り締まり中の警察官が現地で直接確認しない限り罰則を与えることができません。
しかし、警察に情報提供することでパトロールや取り締まりが強化されたり、該当車両や運転者に前歴がある場合にはより効果的な対応を取ってもらえる場合があります。
特に整備不良に関しては通報窓口を設けるなど積極的な取り締まりが行われています。
更に危険度の高い車両であればその場で通報した場合には即出動となるケースもあります。
道路交通全体をより良くしていくためにも面倒くさがらずに警察に情報提供することを心がけてください。
警察への通報手順や流れを以下の記事で解説しています。
以下の記事では煽り運転の被害に遭ったケースを解説していますが、通報自体の流れは同じです。
また、以下の記事では危険運転車両を第三者として見かけて実際に通報した時の他県段をまとめています。
さいごに
危険な運転の被害者になった場合の通報の流れはこちらの記事で紹介しています。また、危険運転車両を見かけた場合の第三者としての通報した体験記がこちらです。
被害になったときの証拠として、そして心理的な安心感のためにもドライブレコーダーの装着をおすすめします。
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